“悪質な買い手”をなぜ? 仲介会社のあり方とは
小川彩佳キャスター:
中小企業のM&Aで、仲介会社のあり方が問題になっていますが、そもそもなぜこうした悪質な買い手を紹介するに至ってしまうのでしょうか?

調査報道部 小松玲葉記者:
中小企業のM&Aでは、1つの仲介会社が間に入って、売り手と買い手の両方から手数料を受け取る場合があります。売り手との取引は1回限りで終わりますが、買い手は何社でも買収できるため、手数料もその分何回も受け取ることができるという仲介会社のメリットがあります。
何社も買ってくれる買い手というのは良い買い手なので、長期的な取引の関係が続くことになります。そうすると、どうしても売り手ではなく、買い手にとってのメリットを優先するという問題が発生しやすい。
仲介会社に対して中小企業庁は、今回のM&ADXの事案だけではなく、様々な悪質な買い手との取引に関与した延べ21社に対して注意を行っています。
小川キャスター:
注意は行っているが、取り締まるなどの行為には至っていないわけですね。

小説家 真山仁さん:
本来のM&Aというのは、売る側も買う側もファイナンシャルアドバイザーや専門の弁護士といった専門家をたくさん並べます。ところが中小企業になると、その費用がない。そうすると仲介会社を信用して「任せてしまおう、これで安心だ」と思う。さらに、売り手は借金があったり会社が事業が回らなかったりといった負い目があるから売りたい。一番きついのは個人保証を社長がしている場合で、家庭の生活も難しいと言われてしまう。そこにまず隙がある。
仲介業者が良いか悪いかというのは、普通は判断できません。どうしたらいいかというと、まず相談する前にお金をちゃんと整理する。個人で残すお金はちゃんと残さないといけないし、会社で内部留保があるなら使えるものは使ってしまう。そして、本当に売るときは会社は残さない、売ってしまう。そうすると、社長は責任を感じるのでもっと慎重になります。楽をさせてもらえると思って仲介業者にすがりがちですが、M&Aは楽をするためにやるのではない。例えば、国が専門の弁護士の費用を2時間だけ持ってあげるといった支援をまずやらないと、規制して注意するのはそもそも間違った対策だと思います。

小川キャスター:
もっと売り手が自らの身を守る術を身につけるべきだということですね。ただ、被害を受けた方々がこのまま泣き寝入りとなってしまうというのは、いたたまれないものがあります。
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<プロフィール>
真山仁さん
小説家 「ハゲタカ」「ロッキード」など
最新著書に「ロスト7」