“出禁”も…手数料欲しさの取引か

後継者を探していた大阪の老舗革靴メーカーの前社長。現金が抜き取られ、社会保険料や給与の支払いがストップ。買収した経営者は姿を消し、廃業に追い込まれました。

廃業となった革靴メーカー 丸吉肇前社長
「唖然とするしかない。これはもう詐欺だと、計画的な」

1000万円以上を抜き取られたものの、廃業寸前で会社を取り戻した愛知県の介護施設の経営者も、怒りをあらわにします。

被害にあった介護施設 水落美香代表
「社会保険料の滞納。ガス代が引き落とされません。それは毎日のようでした。絶対に許せないという思いでしたね。ここまでやってくれたかと」

こうした怒りを向ける相手は、買い手・A社長です。10社以上を買収。その全てでトラブルを起こし、数千万円以上の被害を訴える企業も少なくありません。

この番組でも「悪質M&A業者」として追及してきました。

――キャバクラで法人カードを使われた?

買い手 A社長
「あれは接待や自分の給料と相殺している」

――お金を抜いて逃げる手法を取っているように見えるが

買い手 A社長
「それはもう全然間違いだと思います」

そして、この問題の買い手・A社長に4つもの会社を紹介していたのが、仲介会社M&ADXです。A社長が悪質な買い手だと気づかなかったのでしょうか?

A社長に会社を買われ、1300万円もの預金を抜き取られた介護施設の社長は仲介したDX社の責任も大きいと話します。

被害にあった 岐阜・介護施設社長
「(自分の契約の)前に2社紹介していて、その状態でA社長の行動というのを当然把握できるし、A社長の経営能力を判断できる状態だった。(A社長に)売ったら潰れるとわかっているわけじゃないですか。わかって紹介しているので」

さらに、被害を受けたことについて、この社長が仲介したDX社の社員に訴えると、こんな発言がありました。

M&ADX社員
「僕もこの仕事やって5年。いろんなお客様に会いましたけど、ここまで悪質、初ですよ。さすがにないわと。僕も彼(A社長)に言いました。出入り禁止確定と」

この社員は「A社長は悪質なので出入り禁止にする」と明確に述べていたのです。それにも関わらず、DX社はA社長の仲介を続け、次の三重県の老人ホームの買収を成立させました。

A社長に経営権が渡った三重県の老人ホームでは現金などが抜きとられ、取引先への支払いや従業員への給与も払われなくなり、わずか3か月で閉鎖に追い込まれました。

DX社は、少なくとも1000万円を超える仲介手数料を得ていたとみられています。

被害にあった 岐阜・介護施設社長
「全くもって悪意で、手数料欲しさの取引としか考えられない。人の会社、人の人生をなんだと思ってるんだ」