消費税の減税、議論尽くされぬ課題の数々

立憲民主党が参院選の公約に“食料品にかかる消費税を、原則1年間ゼロにする”と盛り込むことを決めた日、自民党の森山幹事長は「1年間の限定だったら、消費税を下げるのではなく、別にやれる方法があるのではないか」と提起した。
消費税の減税をめぐっては、「財源の問題」や「一度引き下げたら元に戻すのが難しい」と指摘する声も上がるが、この他にも議論が尽くされていない課題が山積している。

<課題(1)更なる物価上昇の可能性>
物価高対策として、政府・与党内で浮上している案に「消費税減税」や「現金給付」などがある。

消費税減税は消費が伴うため、貯蓄に回る可能性のある現金給付に比べ、景気刺激の効果もあるとされるが、消費が活発化することで更なる物価高に繋がる懸念も残る。

「経済活動が止まったコロナ禍」と「物価高の今」とでは経済状況も異なる。景気を刺激することの是非や、現金給付により一部が貯蓄に回ることの是非などについても深い議論が求められる。

<課題(2)「減税」と「給付」実際どちらが支援に繋がるか>
立憲や維新は「食料品にかかる消費税の減税」を主張している。これは、食料品は生活に欠かせないものであることや、値上がりが顕著なのがコメなどの食料品であり、食料品に絞った減税というのは財源も考慮されたものとも言える。

では、「消費税の減税」と「現金給付」の場合、どちらが生活者の支援になるのだろうか。財務省は、食料品などの軽減税率8%を0%にすることで失われる税収は年間約5兆円だと説明している。この5兆円は現金給付だと国民1人一律4万円程度に相当する。

では、減税で4万円分の恩恵を受けるには、どれぐらいの食料品などの購入が必要になるのか。計算すると50万円分となる(50万円×8%=4万円)4人家族なら200万円分の食料品などを買った時に、現金給付と同等の恩恵を受けることとなる。

「消費税減税」と「現金給付」のどちらが支援に繋がるのか、各家庭により事情は異なるが、こうして具体的な数字で示すことで、見え方も変わってくるのではないだろうか。

<課題(3)飲食店への影響>
飲食店では、店内での食事は税率が10%だが、弁当にして持ち帰ると軽減税率の対象となり8%となる。仮に軽減税率8%を0%にした場合どうなるのか、国民民主党の玉木代表は店内飲食(10%)と持ち帰り(0%)で10%の差となることから「外食する人がすごく減ってしまうのではないか。その意味でも飲食店の経営には大打撃になる可能性がある」と指摘する。

この他にも、「単価の高い食材を買う傾向にある高所得者の方が恩恵を受けやすい」「減税を見越した買い控えが起こる」などの懸念の声も上がる。

与野党各党から「消費税の減税」を求める声は上がるが、その効果と副作用の議論が尽くされたとは言い難い

また、税は国の財政の根幹をなすものであり、「一時的な上げ下げが適当なのか」「変えるのであれば社会保障などと一体で考える必要はないのか」「毎年のように給付や減税を繰り返すのであれば、歳入・歳出のあり方自体に問題はないのか」など、議論しなければならない課題は山積している。