藤田文江の「聲」は現代にも深く響く

藤田はそのわずか2か月後、昭和8(=1933)年4月24日に外出先で当然、腹痛に襲われて急性腎臓炎のため亡くなりました。24歳でした。

当時は一等の歌詞で称賛された彼女ですが、自ら編集し、通夜の席に届いた「夜の聲」などの詩の方に本質はあると言います。

(全集を編さんした 谷口哲郎さん)
「『夜の聲』は昼の声ではないということ。昼=戦争に覆われていく時代。『夜の聲』で詩を書くということなので、反時代的なスタンスを題名にも込めている」

「満州事変後に彼女は急にたくさん(詩を)書き出す。かなり危機感を時代に対して持ったと思う」

「今の時代はどうかというとまた世界中で戦争がある時代になってきている。そこに単に同調するだけでなく一定の距離をもって見ていかないといけない」

戦争へと向かい高揚する社会の本流から離れた場所にいたからこそ発せられた警鐘とも言える詩人・藤田文江の「聲」は、現代にも深く響きます。