◇《受刑者に問いかけ、対話を重視する刑務官》
この日は“犯罪被害者の気持ちを考える”がテーマです。受刑者たちの意見を、刑務官がさらに掘り下げる対話形式で進みます。
受刑者
「被害者にとっての本当の反省だったら、加害者も自分の大切なものや大切な人、何かを失うべきだと思います」
刑務官
「なんでそう思う?」
受刑者
「被害者の気持ちに寄り添うからです」
刑務官
「被害者の気持ちに寄り添って、自分も同じ目に遭えばいいと?」
受刑者
「それが本当の反省だと思います」
月形刑務所が、この取り組みを始めたのは去年2月のこと。拘禁刑の導入に向けた、改革の一つです。
受刑者
「今まで刑務官というのは、やっぱり受刑者に対して一線置いていると、違うものだと思っていましたけれど、同じ人間だったということを感じました」
刑務所では試行錯誤が続います。
◇《自身を掘り下げていく“当事者研究”という対話スタイルがヒントに…》
月形刑務所の刑務官
「月形から参りました。よろしくお願いします」

3月、月形刑務所の刑務官たちが訪れたのは、北海道日高地方・浦河町にある『べてるの家』という施設です。
メンバーの一人が歓迎の歌で出迎えます。
メンバーが歓迎の歌を披露「♪おなかがすいたくらいで…泣かないでください」

統合失調症などの精神障害があり、幻聴や妄想などに苦しむ人たちが、ソーシャルワーカーらと、ともに暮らしています。
月形刑務所の刑務官
「先手必勝で、殴ったもん勝ちっていう感じのスタンスの人が、やはり受刑者には多いですね」
ソーシャルワーカー 福岡拓弥さん
「“べてる”でも、それは変わらないですね。そのことを爆発というふうに呼んでいます」
月形刑務所の職員が、『べてるの家』を見学するわけは、“当事者研究”と呼ばれる対話の手法を学ぶためです。
この“対話”という取り組みは、もう40年以上も続けられています。
『浦河べてるの家』メンバー 浅野さん
「車がバァッと走ったんですよね。それで、もう腹立っちゃって…自転車をばって(倒して)しまったんですよね」
『浦河べてるの家』向井地生良 理事長
「やっぱり苦労が溜まってパンパンになると、アンテナが敏感になって、ちょっと誤作動的な感じになる…」
『浦河べてるの家』で行われるのは、病気の“治療”ではなく“研究”です。
ひとり一人が、自分の病気の研究者となり、生活の中で現れた症状や、苦労したことを発表します。

『浦河べてるの家』向井地生良 理事長
「浅野さんの生活の中で、いろんな何か不信なことは、どんなことがありますか」
『浦河べてるの家』メンバー 浅野さん
「うちの親がもう70歳で高齢になって、その後のことがわからないとか」