農業政策の課題と食料自給率

――戦後の農業政策についてどう思いますか?

村田吉弘氏:

米が足りないのは農業政策の失敗です。官僚や政治家は短期的な視点で動くので、自分たちで生活を何とかする意識が必要です。

日本の国土の70%は山で、平野部は30%しかありません。そのわずかな田んぼを休耕田にするなんて馬鹿げています。コメ農家の後継者を増やすには、収入を増やすことが重要。コメ農家の年収が400万円だと後継者は出ませんが、倍になれば出てきます。上がったお金が生産者に還元されるか心配です。

昔、魚沼コシヒカリが茶碗一杯60円でした。自分は年寄りだからあまり食べないというのもあって1杯120円でもいい。食べ盛りの高校生には安い米も必要です。余った安い米は東南アジアに売ればいい。

高い米を外国に輸出し、安い米を輸入しつつ、自国は自国の中で食べられるようにする。自給率が60%ぐらいまであれば、飢えて死ぬ人はいない。

――地域での食料調達の重要性は?

村田吉弘氏:

岩手では生協で県内消費が中心で、いいものが安く身の回りにあります。魚沼コシヒカリも八幡平コシヒカリも変わりません。身の回りで食料が調達できれば理想的です。

ヨーロッパでは「25キロ以内のものを食べなさい」と言います。魚沼の米を九州の水で炊いても美味しくない。米と海藻、大豆があれば、50年後も大丈夫です。地球を救うのは米と大豆だと信じています。