今後の交渉「自動車とコメが先決」

4月中にも次回の閣僚級協議が予定されるが、今後の交渉については「アメリカが繰り返し口にする【自動車】と【コメ】で答えを出すことが先決」だと言う。

細川さん:
「今コメの値段が高騰して消費者が困っている。ならば備蓄米を放出した分の補充はカリフォルニア米を30万トン緊急輸入して無税でやりますと。それだけでトランプ氏は喜ぶ。6月中旬のG7サミットでは必ず日米首脳会談がある。その際には、【自動車】【コメ】の問題も大筋の目処がついていることが必要なのでそれまでにもう1回ぐらい、例えば5月の連休に石破総理が訪米して会うことが望ましい。それぐらいの首脳同士の会話が今回は特に必要」

米国に生産拠点「現実的ではない」

一方で、すでに発動されている関税も一刻も早い解消が求められている。

【鉄鋼・アルミニウム】(3月12日発動)⇒25%
【自動車】(4月3日)⇒25%(これまでの2.5%とあわせて27.5%)
【相互関税】(4月5日)⇒全ての国・地域が対象の一律10%(上乗せ分は90日間の猶予)

▼自動車部品⇒5月3日までに25%の追加関税を発動予定
▼医薬品・半導体・銅・木材⇒時期未定

特に自動車への追加関税は日本にとって深刻な問題だ。

日本の自動車メーカーの対応について、国際経営論と経営戦略論が専門の入山章栄さんに聞いた。

――これまで日米貿易摩擦の時は「アメリカに現地工場を出す」「投資を拡大する」と乗り切ってきた。

『早稲田大学ビジネススクール』教授 入山さん:
「一部報道で、ホンダがカナダとメキシコの生産拠点をアメリカに移すとあるが、そう簡単ではない。工場を移すというのは、とてつもないプロジェクトでお金もかかる。時間的にも3~4年は必要だがその頃にはトランプ政権は終わっている。なのでどの程度真剣にやるか、しかもすでにかなり移し切っている部分もある。さらに言うと、移したところで作れるのかと。特に最近の自動車は非常にレベルが高い。そう考えるとあまり現実的ではない」

国内回帰も「製造業の雇用にインパクトない」

米国企業もトランプ氏の求めに応じて国内回帰の動きがある。

▼GM(ゼネラル・モーターズ)⇒カナダ・メキシコから米国内での生産増を検討(3日)
▼エヌビディア⇒最新の半導体を米国内で生産すると発表(14日)
▼アップル⇒米国で4年間に5000億ドル(約72兆円)を投資(2月)

――これも眉唾もので、大体アメリカ企業は「何年間で最大何億ドル」とか言っても初年度は20分の1ぐらいしか出ない。エヌビディアも最新の「2ナノ半導体」をTSMC、台湾で作っている。本当にアメリカで作れるのか。

入山さん:
「無理、作れない。技術的にも、それと綺麗な水も必要だし優秀な人材も必要なので。そもそも今やアメリカの民間産業における製造業の比率は、雇用の比率で10%くらい。どんなに国内回帰をしても13~14%に増えれば御の字という程度なので実はそれほどのインパクトはない」

それなのに、トランプ氏がこだわる理由は…。

入山さん:
「トランプ支持層は『中国や日本から輸入品が沢山入ってくることで我々の雇用が奪われた』と思っているので、トランプ氏としては『製造業で雇用を増やす』というポーズを取りたい」