
◆徳島県立博物館 井藤大樹 学芸員
「高知県には、黒潮の流れ方から、地理的にも流れてきやすいです。もしかしたら、近年の海水温の上昇により、以前は流れてくる途中で死んでしまっていた魚が、生き残って流れ着いているかもしれないです」
生まれたての“赤ちゃんハゼ”が、黒潮に乗って、700~800kmもの“大冒険”の末に高知までたどり着いた…。もしそれが事実なら、自然や生命の偉大さを、改めて感じさせられます。
あるいは、黒潮に乗って高知まで流れ着いた「ツバサハゼ」が繁殖し、私たち人間の知らないところで、ひっそりと“生命のバトン”をつないでいるのかもしれません。
そんな「ツバサハゼ」ですが、橋の建設・河川の改修・水質汚染などによって、生息環境が悪化していて、環境省レッドリストで「絶滅危惧IA類」に指定されています。これは「ごく近い将来における、野生での絶滅の危険性が極めて高いもの」という分類です。
今回論文を発表した井藤さんと庄野さんは、今回の発見の生物学的な意義とともに、こうした生き物が生息できる川や海の環境を守っていくことの重要性も、話しました。