食料品への消費税減税が焦点に

中長期的には、現在、8%の軽減税率が適用されている食料品への消費税の税率引き下げが避けて通れない命題でしょう。デフレからインフレの時代に変わり、中長期的に食料品価格の高騰が続きそうだからです。

すべての人が支払う食料品に対する消費税の減税は、ある意味公平で、逆進性の緩和という目的に合致しています。住民税非課税世帯という必ずしも対象がはっきりしない世帯に給付金を繰り返すより、食料品への消費税減税の方がよりダイレクトに効くはずです。

軽減税率という制度がすでに存在しているので、軽減税率だけ動かすことは、制度やシステムの上でも、それほど難しいことではありません。財源も、例えば8%を5%へと引き下げる場合、2兆円程度で済むと見られます。もちろん、歳出削減などの努力は必要ですが、ガソリン補助金にすでに8兆円以上使ったことや、5万円の一律給付で5兆円必要なことを考えれば、決して非現実的な数字ではありません。

インフレ、格差拡大時代に適切な税制を

世界には、イギリスやカナダなど食料品の消費税をゼロにしている国はいくつもあります。コメや野菜にまで8%の消費税を課すことが、格差が拡大する今の日本経済の実力から言って、本当に適切なのかを議論すべき時のように思うのです。

今回の経済対策作りでも、消費税の議論は封印されそうな気配です。毎年、12月から3月末までは、翌年度予算成立を優先させるために、減税などの大きな修正は議論できません。4月以降の後半国会では時間が限られているので予算関連の議論は行われず、秋は秋で、即効性が求められる補正の議論が優先されがちです。

この国の政治は、一体いつ、抜本的な税制改革の話をするのでしょうか。

播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)