津波で1階天井まで浸水

ちばさんの作品は、窓やカーテン、扉、壁、階段といった“建物の境界”をモチーフに表現しています。震災を経験してから“境界”について、これまで以上に深く考えるようになったといいます。2011年3月11日、当たり前だった境界が、簡単に崩れてしまったからです。そんな想いが込められた作品の一つ「来客」

彫刻家・ちばふみ枝さん:
「この家自体がモチーフになっている。ここの窓から庭が見える。この部屋がリビングだったので、お客と庭を眺めるとか、緑のきれいな季節のことを思い出して、家の中で過ごした断片的な記憶をつないで、いろいろな時間とか思い出を一つの形にした」

この家は、ちばさんと家族が暮らしていた場所。そして、震災で大きな被害を受けた場所です。津波によって一階の天井まで浸水しました。

彫刻家・ちばふみ枝さん:
「これも砂なんですけど、掃除して消してしまわないで、来てもらえる人に見てもらえればいいのかなと思って残しています。この壁が模様のように見える。よくこれも作品ですかと聞かれる。釘がさびて浮いてきて、さらに汚れも浮いてきた。

彫刻家・ちばふみ枝さん:
「ここは元キッチンとダイニングで家族が食事するスペースだった。こじんまりしていて。自分一人が制作するのにちょうどいいなって。家族も自分も壊そうとは震災後から今まで思ったことはなくて、自分にとっては被災した家じゃなくて、その家の延長。住む家としては使えないけど、自分の作業をするスペースとしては使えると」