ユニクロの3区は前回区間4位、昨年のクイーンズ駅伝でも3区区間5位だった吉川と見て間違いなさそうだ。吉川の特徴は幅広い種目で日本トップクラスの記録を出していること。それを30歳をすぎてやってのけていることだ。

各種目の自己記録と、その年の日本リストの順位は以下の通り。
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1500m:4分15秒07(21年)18位
5000m:15分32秒29(22年)30位
10000m:32分18秒01(22年)19位
ハーフマラソン:1時間10分07秒(22年)9位
3000m障害:9分58秒12(20年)6位
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1500mからハーフマラソンまで、徐々に距離を伸ばした選手は過去にもいた。だがすべての種目の自己記録を3シーズンに集中して出した選手はいないのではないか。

吉川の30歳を過ぎてからの成長を、長沼祥吾監督は次のように見ている。
「結局は時間をかけたから、ということになるのですが、年々、自分の中で目標を持って、確実に練習を積み上げてきたことが一番の理由です。それができた大前提はケガをしないこと。ユニクロに移籍して来た頃はケガをよくしていましたが、体調に合わせて追い込んだり、休んだりができるようになってきました。故障をしないで練習が継続できるようになって、力を発揮できるようになりました」

吉川の潜在能力が、どの種目で最も発揮されるのか。1500mとハーフマラソンの記録を見ると、10kmの距離ではまだまだのびしろがある。

ユニクロではもう1人、今年移籍加入した平井見季(26)が5000mで15分24秒82の自己新、今季日本リスト12位の好タイムを出した。タイムに波があるのは事実で、長沼監督も「活躍し続ける体力がまだない」と認める。武器は「世界を目指す気持ちが強い」ことだと長沼監督。「調子と、チャレンジ精神が噛み合うと、15分24秒のときのようにバーンと行く」

区間配置のカギを握るのは水口瞳(26)かもしれない。10000m自己記録は大学3年時の32分52秒83だが、今季は33分台後半が2レースと34分台が1レース。「水口が5区に起用できるくらいに上がってくれば、平井と荘司(麻衣・28。今季5000m15分39秒00)の2人で1区と6区を任せられる」と長沼監督。

目標は「トップ5」(同監督)だが、水口が5区に配置され、平井の爆発力が発揮されれば、ユニクロもトップ争いに加わるチームだろう。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)

※写真は萩谷楓