ランに一目ぼれ サトウキビ農家を継がず父はラン栽培の道へ
美しい花を咲かせる達人がいます。真さんの父・紫吉さん。栽培歴は53年にもなります。
▼新垣洋らん園 新垣紫吉 代表
「同じように咲くために、太陽に向かっていちいち動かしているんですよ」
世界らん展日本大賞で13年連続入賞。沖縄国際洋蘭博覧会では、内閣総理大臣賞を二度、受賞しています。
ランとの出会いは高校生のとき。当時珍しかったランを恩師に紹介され、衝撃を受けました。
▼新垣洋らん園 新垣紫吉 代表
「もう見たことのないカトレアとか、いろんな花があって、ただ素晴らしいという記憶しかないです」
美しさの虜になった紫吉さんは、親の反対を押し切り、家業のサトウキビ農家を継がずにラン栽培の道へ。愛知県で栽培方法を学んだあと、沖縄が本土に復帰した年に、30坪の温室を建てました。最初は苦労の連続だったそうです。
▼新垣洋らん園 新垣紫吉 代表
「栽培して、いざ販売。それが大変でした。もうあの時はもう市場もないしで、那覇の花屋さんに行って『置いてくれ』と。売れた分だけでいいから、とにかく売ってくれとお願いしました。それでも受け取ってくれなかったです。これは高級だから、店員も栽培方法を知らないし、客に説明もできないから、ランは置くことできないと……」
産業まつりなどに花を出品して名刺を配り歩き、園芸愛好家向けに自宅販売からスタート。7~8年かけて、ランの魅力を広めました。また、新しいランを求めて、交配にも挑戦。これまでに39品種を世に送り出しています。
しかし、県内での栽培は、1992年をピークに減少の一途。厳しい状況のなか、父の背中を見て育った真さんは台湾に留学。世界でもトップクラスの栽培技術や品種開発について学び、これからの沖縄の洋ラン界を盛り上げようと試行錯誤を重ねています。
王冠をもつ「ビカクシダ」 希少性から高値で取引も
▼新垣洋らん園 新垣真 専務
「これはビカクシダという植物で、シダ植物の仲間になります。葉っぱの形状が鹿の角みたいな形をしていて、とても人気のある種類です」
シダ植物の一種「ビカクシダ」。鹿の角のように前に伸びているのが、胞子をつくる胞子葉。独特な姿形がアートのようで、希少性が高いものは、高値で取引されることも。
▼新垣洋らん園 新垣真 専務
「これが王冠のようだと言われていて、『クラウン』と呼ばれているんですよ。細かく分岐する胞子葉。この分岐の広がりが本当に芸術的です。ランの横の壁を使いながら、場所も有効活用しながら育てることができるので、ちょっと力を入れようかなと思っています」
春を求めて洋らん園を訪ねると、自然が生み出す造形美に魅せられて探求を続ける親子に出会いました。