交渉材料のヒントは「大統領令にある」
さらに細川さんは、日本が【交渉で切れるカード】について、大統領令にヒントがあると指摘する。

<相互関税の大統領令>
「相互関税は根本的な条件が満たされた、解決された、または緩和されたと私が判断するまで適用される」
▼報復措置を取った場合は関税を引き上げ
▼非互恵的貿易協定を是正し、経済及び国家安全保障問題においてアメリカと足並みを揃える重要な措置をとった場合は関税引き下げ
細川さん:
「非互恵的貿易協定に関しては『日米貿易協定を見直して是正しますよ』というのも一つ。それから例えば、先端半導体の対中規制を『アメリカと足並みを揃えて安全保障のためにやってますよ』と。日本がやってることを“ちゃんとやれば関税下げますよ”というようなことを暗に匂わしてる。これから交渉しますということが前提になった仕掛けになっている」
トランプ氏言及の「安倍元首相」もカギ
また、トランプ氏が2日の会見で口にした「安倍元首相に『貿易が不公平だから、どうにかしなければいけない』と言ったら、彼は『分かっている』と言った」という発言にもヒントがあるという。

日米貿易協定は、一定の農産品と工業品の関税を相互に撤廃または削減することを定めたもので、2019年に安倍元首相とトランプ氏が結んだもの。
共同声明には【日米両国は協定が履行されている間、その精神に反する行動を取らない】とあり、安倍元首相も当時会見で、「日本の自動車あるいは自動車部品に対し、追加関税を課さないという趣旨であることはトランプ大統領に明確に確認をし、それを認めた」と話している。

細川さん:
「これは言い方が大事で、『約束違反だ』と言うのではなく、トランプ大統領の反感を買わずにむしろ情に訴える。この約束を元に、安倍さんは農産物の関税引き下げという難しい問題で国内を説得したんだと。約束を守ってくれないと、安倍さんが忍びない、安倍さんのために、と訴える相手はトランプ氏だけだし、言うのは石破さんしかいない」
トランプ発言からのヒントは他にも

「日本はコメに700%の関税をかけている」
「トヨタはアメリカで100万台の外国製の車を販売しているがGMは日本でほとんど販売していない」
つまりは、「コメ」と「自動車」でトランプ氏に刺さる話を持っていくということ。例えば、備蓄米を放出した分をアメリカから買うのも1つだという。
細川さん:
「700%の関税というのはものすごい誤解だと思うが、アメリカにどうやって『買っているぞ』と見せるか。自動車も『アメリカで検査して通ったものは日本の道路を走れるようにしてあげるよ』というような言葉で、どうそれをルール化していくか。アメリカは交渉のとっかかりを見せているのだから、それを前提にして日本政府全体で戦略を考えた方がいい」
(BS-TBS『Bizスクエア』 2025年4月5日放送より)