企業風土の礎?日枝久取締役相談役は“独裁者”?

さらに、こうした“ガバナンス機能不全”の遠因として指摘されているのが、フジテレビの企業風土です。

フジテレビ 遠藤龍之介副会長(当時・1月27日)
「フジテレビは傲慢なんじゃないかということがネット上には溢れております。80年代、90年代に私どもがトップにいたときに、間違った万能感を植え付けられて、現在のようなことに至っているのかもしれないなと思います。ですからそういったものはやっぱり時代に合わせてアップデートして直していかなくてはならない」

遠藤副会長(当時)は、フジテレビが「間違った万能感」を抱くようになった背景として、80年代、90年代の成功体験を指摘しました。

そして、この時代のフジテレビを強力に率いてきたのが日枝久取締役相談役(87)です。

日枝氏は1980年に編成局長に就任。以降、社長や会長を歴任し、41年間にわたって取締役を務める、いわば“フジテレビの礎”です。

フジ・メディアHD 金光修社長(1月27日)
「取締役相談役は現場には直接タッチしていないという立場でありますが、やはりその影響力は大きいと思います。そしてまた、この企業風土の礎を作っているということに関しては間違いないと思います」

日枝氏はこれまでの経営陣の人事にも深く関わってきたとされ、記者会見の場で身内の日枝氏に「尊敬語」を使う異様な光景も見られました。

フジテレビ 嘉納修治会長(当時・1月27日)
「日枝取締役は相談役でいらっしゃいますので、相談役ですから業務執行はしないわけですね。今日ここに出席していないのはそういうことです。日枝相談役は長年やってこられたことによって、いろんな経験や知見をお持ちです。ですから、我々が経営判断していく時にいろいろとお知恵を借りたり、教えていただいたり…そういう意味では先輩ですから当然のことだと思います」

こうした状況を受け、日枝氏を痛烈に批判したのがフジ・メディアHDの株式をおよそ7%持つ大株主で、アメリカの投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」です。

ダルトン・インベストメンツの書簡(2月3日付)
「なぜたった1人の独裁者がこの巨大な放送グループを40年近くも支配することを許されてきたのでしょうか。信じがたい。日枝氏は去らなければならない」

ダルトン・インベストメンツは書簡で、フジテレビと親会社のガバナンスが刷新されない限り、スポンサーは戻ってこないと指摘。日枝氏のような独裁者の登場を許さないために、独立した社外取締役を過半数とするよう求めました。

企業統治の専門家で、青山学院大学の八田進二名誉教授はフジテレビ単体で取締役が20人以上いたこと自体が大きな問題で「時代遅れのガバナンス体制」だと指摘します。

青山学院大学 八田進二名誉教授(2月時点)
「長期に権限を持っているとまず歴史が示すように必ず澱む。それから一強、専横になる可能性は多分にある。日枝氏があまりにも隠然たる力を発揮し、経営を良くない方向へ誘導していった。それを黙認していたというならば取締役会の責任なわけですよ。社外取締役が日枝氏の友達だったんじゃないかという見方をせざるを得ないね。まさに昭和の感覚、これが一番命取りになりますよ」