元死刑囚の本音「教祖との決別」

事件の教訓をどう伝えるのか。オウム真理教元幹部の家族が取材に応じた。

大阪拘置所で刑が執行された新実智光元死刑囚の妻、由紀さんは夫が松本元死刑囚への帰依から抜け出していたことを伝えたいと言う。

新実智光元死刑囚の妻 由紀さん
「(信者は)教祖が説いたことだけを信じてるので、そうじゃなくて、きちんと見てほしいと」

新実元死刑囚は、地下鉄サリン事件など11の事件に関与して死刑が確定。松本元死刑囚の「直弟子」と公言し、裁判でも「麻原尊師の唱えた計画のため捨て駒になり、地獄へでも行こうと決意した」と述べ、最後まで反省や謝罪の言葉はなかった。

オウム真理教の後継団体アレフの信者だった由紀さんは、新実元死刑囚と面会を繰り返した後、獄中結婚した。

新実智光元死刑囚の妻 由紀さん
「あれだけのことをしたら死刑になるのは仕方ないし、執行されたのは仕方ないのは理解をしているんですけど、自分の夫となれば最後まで生きててほしかった」

自宅には新実元死刑囚の遺骨が今も保管されている。

新実智光元死刑囚の妻 由紀さん
「ただの骨なんですけど、そばに置いておきたいんですよね。本当に」

刑の執行からおよそ半年後、遺品を整理していた由紀さんは夫の日記の内容をみて驚かされることになる。

そこには松本元死刑囚への帰依から抜け出していたことが記されていた。

新実智光元死刑囚の日記
「あの様な生き方だけでなく、もっと他の生き方もあったのではないだろうか」
「僕は教祖にはついていかない。来世は弟子になることはないだろう」
「僕は今、決別してしまったのだ」

新実智光元死刑囚の妻 由紀さん
「信者の人たちにも知って欲しかっただろうし、自分がいっぱい傷つけた人たちにも知って欲しかったと思います」

夫に信仰心がなくなったことを公表した由紀さんに対し、地下鉄サリン事件のある遺族から電話があったという。

新実智光元死刑囚の妻 由紀さん
「『公表してくれて、それを知ることができて、自分は救われた』って言ってくださって、『もう自分はご主人を恨んでません』っておっしゃられて」

新実元死刑囚が信仰を捨てたことについて、滝本弁護士は…

滝本太郎 弁護士
「新実という最後まで信仰深かった、麻原彰晃尊師と殉死して、麻原彰晃尊師と輪廻転生したとみんなが信じている人が、『違ってたかもしれない』と死刑の前に言ってたとなると、自分の疑念がわいてくる。歓迎すべきことであり、驚きであり、現役の信者に影響を与えます。(信仰を)やめるきっかけになるだろうと思います」