企業の業績が悪くなると休廃部されてしまう実業団スポーツ
―――パナソニック スポーツが2022年に発足した経緯は?
大きな契機になったのは、2019年のラグビーワールドカップや同じ時期にバレーボールのワールドカップがあって、日本代表がすごく活躍したんです。その日本代表にパナソニック所属の選手が多くいるのに「本当にその価値がいかされているのか?」ということが、議論のなかにありました。会社の中の事情と外部の要因が合致して「だったらしっかり会社にしてチャレンジしよう」ということになり、発足したということです。

―――今まで「企業スポーツ」というと、企業がスポーツに資金を投じて、というのが多かったと思いますし、社員の福利厚生が始まりですよね?随分と形が変わりましたね?
戦前から企業スポーツがあって、戦後もずっと発展してきました。最初は、社員が元気になる福利厚生の要素が中心で、当社も同じようなスタートでした。それがだんだん広告宣伝の要素、近年では社会貢献とかの要素も加わりました。しかし、当社もそうですが、過去にはわれわれが保有しているいくつかのスポーツ、男子バスケ・女子卓球・女子バドミントン・女子サッカーが休廃部になりました。それはなぜかというと、本業の業績が悪い時に本業じゃないから休廃部されてしまう。そういう歴史を当社に限らずたくさんの企業が繰り返していきました。
―――企業側も苦しい決断なのでしょうか?
その時、例えばバスケットボールのチームに価値がなかったのか?といえば、当時は日本でもトップクラスだったのでそうじゃない。でも会社の業績が悪いとスポーツのレベルは低くなくても休廃部しなきゃいけない。「運営を会社だけに頼っているので致しかたない」となる。ワールドカップにしてもオリンピックにしても大勢の人たちが熱狂して感動するような場面もあるのに、なぜかスポーツはすごく不安定でサステナブルになれない。
―――どうしても企業の業績に左右されますよね。
だからなんとしてもスポーツをサステナブルにするのが、われわれの会社のテーマです。すごくわかりやすい表現をしているのですが、われわれは「企業スポーツ」ではなくて、「スポーツ企業」になろうと。企業スポーツというのは会社が持っている部活、スポーツ企業はスポーツで飯が食えるということ。ちゃんとやっていける事業にしていきたいというのが我々の会社の何よりのテーマで、そのチャレンジを始めたということです。