被害住民たちの言葉

「いまは真新しい寝室で眠るわけですけれど、いつもいつも、『私はいま、焼ける前の寝室で横になっている』って、一生懸命想像するんです」
「あの時は最低限のものを持って飛び出しました。でも、どんなものよりもまず、子どものアルバムを出せばよかった」
ある被害住民の庭では、あの火事で焦げた花が、今年も茎を伸ばし、花を咲かせたそうだ。
「本当、驚いたよ。ただ、それを見ても…前向きにはならない」
「『あの人』を、なんとか助けたくて、一生懸命だったのよ。私たち」
記者の問いかけに対して、時折笑顔も見せて話していたある住民が、突然、俯いた。
「でも、『あの人』の勝手で、近所の家がみんな燃やされて、みんな苦しんで、『あの人』は裁きも受けずに亡くなって…、家族トラブルに自分たちを巻き込んで、迷惑をかけるだけかけて、いなくなって…この山奥の町で、一緒に根を張ってきた『お隣さん』が亡くなったのに、そんな風に思う自分が嫌になる」
(了)
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