■実験「時速500kmの振動でコップの水はこぼれるのか?」 

ついに実験の時が来た。

浮上走行の揺れや振動をはかるため、私は透明のコップと水を準備し、水を張った状態で座席のテーブルに置いて水面を観察することにした。もちろん事前にJR東海の広報担当者に伝えてある。「コップの水が全くこぼれなかったらすごい!面白そうですね」と笑顔で答えてくれたがその後、不安そうな表情も浮かべ「次の試乗会もあり、シートが濡れてしまったらまずいのでこぼれそうになったらやめてください」と言われた。

動き出しはまだ車輪走行のため、車内が多少揺れる。水がこぼれたら中止しなければならなくなるので、コップ内の水は9割ほどにした。

動き始め、車輪走行時。水面はゆらゆらしたが、水はこぼれない。

そして、出発して1分もしないうちに女性の声で車内アナウンスがあった。「まもなく浮上走行に切り替わります」。

時速150kmに達するタイミングで地面から10cm浮いて走る浮上走行に入るという。ここからが超電導リニア体験の本番となる。車体が浮上する瞬間、ふわっとした感覚はあったがおそらくアナウンスがなければわからないぐらい自然だった。

浮上走行に切り替わった後も水の揺れは、浮上走行前と変わらず穏やかだった。時速250kmに達すると水面が波うち始め、速度があがるにつれて小さなうねりとなっていく。

そして、また車内アナウンスが流れる。「現在東海道新幹線の最高速度に到しました。時速500km走行に向けてさらに加速中です」。

ここで水を加え、なみなみに張ってみる。車内の速度メーターは、300kmからぐんぐんあがっていき、瞬く間に400kmを示す。窓から見えるトンネルは電灯が一瞬見えては消えを繰り返し、高速感が実感できた。

振動は小さく、なみなみ張ったコップの水面は波打ってはいるが、こぼれない。水は1分8秒間こぼれることなく耐えた。