移住希望の相談は年々増えるも…新たに住宅が建つ予定はなし

双葉町は2030年までに、人口を2000人に増やすことを目標に掲げている。だが、町民の多くは避難先で家を建て、新たな生活を始めているため、現在住む人の約6割(108人)が、町の外から来た移住者になっている。
こうした人たちを繋いでいるのが、双葉町移住定住相談センターだ。住まいや仕事の情報提供や、補助金の紹介などを行っている。移住希望者からの相談は年々増えているという。

土屋省吾 移住相談員
「2024年度は延べ60件。去年と同じペースで増えている実感はあります」
センターでは、双葉町の生活をリアルに体験してもらうため、お試し住宅を用意している。最大4泊5日、家族連れで利用することもできる。

土屋 移住相談員
「食器もある程度用意して、1週間ぐらいここに居て、自分の肌に合うかどうか確認するのはいいかなと」
だが、希望者からの相談が増える一方で、新たな問題も生まれている。
土屋 移住相談員
「駅の西に『駅西住宅』という災害公営住宅があるんですけど、夏ぐらいはまだ空き住居があったんですよ。秋ぐらいに一旦満室になってしまい、住居が少ない。入れる住居が」

町は民間アパートなどを増やそうと企業にも働きかけているが、建築資材の高騰の影響で難しく、新たに住宅が建つ予定はないという。
「都会過ぎるところより合ってる」 移住始めた子育て世帯
こうしたなか、子どもの環境を変えたいと、駅西住宅に移住してきたのが高久田祐子さんだ。

高久田祐子さん
「(移住した)子育て世代第1号だと思います」
もともといわき市で暮らしていたが、息子の蒼くん(16)が学校に馴染めなかったことなどから、2022年に親子3人で移住。
環境が変わったせいか、蒼君は隣町の中学校に通い始め、卒業後は通信制の高校に進学した。2025年から飲食店でアルバイトも始めた。

蒼くん(16)
「都会過ぎるところより合ってると思います。(双葉町に)来てからのほうが、健康的な生活は送れている気がします」
娘の寧々ちゃん(10)は小学4年生。双葉町には今も学校がないため、子どもたちは駅から無料の送迎タクシーに乗り、10分ほど走った浪江町の小学校に通っている。

かつて浪江町には6つの小学校があったが、原発事故のあと、すべての学校が閉校に。7年前、なみえ創成小学校が新たに創設され、現在はこの1校だけ。
生徒は全学年合わせて54人。事故前に比べ子どもの数は大幅に減少したが、4月からは転入生も10人ほど加わり、少しずつ増えているという。

神村崇 教頭
「2025年になり、移住という形でどんどん学校に転入している方がいます。はじめは少し友達関係で悩んだりはするんですけども、人数が少ないので、家族のように過ごすことができています」
子どもが学校に通っている間、高久田さんはパソコンに向かう。もともと飲食店の経理をしていたが、在宅ワークが中心だったため、移住しても影響はなかった。
双葉町には、スーパーもまだない。買い物は車で隣の浪江町まで行くか、駅前に来る移動販売車で済ませている。

高久田さん
「いわきの時は毎日買い物に行っていた派だったから、買い忘れてもすぐ行ける距離にあったけど、今は冷蔵庫の中身を見て、これとこれとこれを買わなければと頭にインプットして買いに行く」
それでも、不自由さはほとんど感じていないという。
高久田さん
「コンビニが24時間開いていなければと思っていたが、開いていなくてもいい、みたいな。これが本当なのかも」
双葉町に移住して、新たなコミュニティも生まれた。毎週木曜日、駅西の集会所では地域の住民たちが集まり、お茶を飲む会を開いている。いつも欠かさず参加している高久田さんは、ほとんどの人が顔なじみだ。

高久田さん
「びっくりしているのかな、どうなのかなと思って」
参加者
「最初子どもを見たときね、嬉しかったよ。『あ、子どもが来てよかった』って」
参加者
「でも学校が隣町までは不便だな、という感じ」

高久田さん
「普通に楽しいです。いろんな話を聞けるし、いろいろ教えてくれるし、楽しいですよ」