閉店した名店の「レシピのみ継承」

超厚切りのポークソテーは中がうっすらピンク色で肉汁じゅわ~。
サックサクのチキンカツには、玉ねぎやピーマンなどが入った特製トマトソースがたっぷり。

『烏森百薬』(東京・港区)で提供されているランチメニューはどれも“絶やしたくない思い出の味”です。

例えば、人気メニューの「ビーバー定食」(1000円)。
秘伝のソースを使った生姜焼きと、旨味の詰まったカニクリームコロッケがセットになった一皿ですが、これは2020年に閉店した東京・神田の人気洋食店『キッチンビーバー』の看板メニューです。

この食堂を運営しているのは、食を通した街づくりプロデュースなどを手掛ける会社。後継者不足などで閉店した店の「レシピだけを継承」して提供しているのです。

『株式会社ミナデイン』永井未来さん:
「二度と食べることが出来なくなってしまう店の味を復活させて残していく取り組みです。店ごと引き継ぐのはコストがかかる、地方だと誰がそこで店を運営するかというのも課題の1つで」

店舗を丸ごと引き継ぐのは設備の維持費や人件費などのコスト面からハードルが高いため、「レシピのみを引き継ぐ」方法を考えついたとのこと。得た収益の一部は、店主に還元される仕組みになっています。

レシピの提供は「運命的な出会い」

1960年創業の『キッチンビーバー』は、高木章さん・カヅ子さん夫妻が2人で切り盛りする人気の洋食店でした。

しかし、章さんが体調を崩し入院。カヅ子さんは1人で店に立ち続けたものの、自身も体を壊し、閉店を決めたのだといいます。
すると…

高木カヅ子さん(76):
「常連さんがカニクリームコロッケと生姜焼きがすごく気に入っている人で『これが無くなっちゃうの?』ってなって。そしたらその人と、『烏森百薬』の社長が知り合いで」

常連さんからの紹介で、「お店を買ってくれるのかと思ったらメニューだけだって!」と、最初は何だかよくわからなかったと笑うカヅ子さんですが、看板メニューの味を残せたことは嬉しいと話します。

カヅ子さん:
「同じ材料を使ってもできる人とできない人がいる。継承された味は100点!食べ物ってみんな思い入れがあるんですよ。運命的な出会いって感じがしましたよ」

誰にでもある「もう一度食べたい思い出の味」が、様々なカタチで受け継がれ始めています。

(THE TIME,2025年3月4日放送より)