「顔も腫れ目は陥没、到底、女房だと分からなかった」

路上に倒れていた美智恵さんは病院に搬送されたが、その後死亡が確認された。

死因は外傷性脳障害だった。

美智恵さんの夫は、病院で妻・美智恵さんと対面した。

検察官:美智恵さんはどんな状態でしたか
美智恵さんの夫:到底、女房と分かりませんでした
        顔も腫れていて色も変わっていて、目は陥没して、
        もうひどい有様でした

果たして目の前にいるのは自分の妻なのか。
美智恵さんの夫は、看護師に尋ねた。

美智恵さんの夫:バレーボールでできた右肩や右腕にある手術痕の写真を
        看護師に見せて、『この傷はありますか』と聞きました
        『同じ所に全く同じ傷がある』ことと、
        足の特徴的な外反母趾を確認して、多分女房だと思いました

美智恵さんの娘は、母親と対面した時のことを、こう供述している。

美智恵さんの娘:30年間みてきた母だとは、判断できませんでした
        白髪の感じが母に似ているかな、としか思えなくて、
        生前の母とは見分けがつかなかった

4人の子ども7人の孫に囲まれていた美智恵さん

美智恵さんには、4人の子ども7人の孫がいた。

孫たちからは『ばあば』と呼ばれ、働く子どもの代わりに孫の面倒を見たり、週末は弁当を作ってピクニックに行ったりと、家族で過ごす時間を楽しみにしていたという。

美智恵さんの息子:大好きでかけがえのない母でした
         母に何の恩返しもできていない、悔しい気持ちでいっぱいです

美智恵さんの夫:家のことはすべて任せていました
        女房を亡くして、炊事・洗濯とやっています、
        ものすごい苦痛です
        廣瀬被告には刑務所から出てきてほしくないと思っています
        最も重い刑を望みます

美智恵さんの夫が法廷で証言すると、廣瀬被告はいきなり立ち上がり「申し訳ありません」と頭を下げた。

検察官に「廣瀬被告に思うことはありますか」と聞かれた美智恵さんの夫は、しばらく沈黙したあと、「・・・しっかり罪を償ってほしいと思います」と答えた。