支持を得る「年収の壁引き上げ」「高校授業料無償化」 だが、課題も…

2月18日、自民・公明・国民民主3党による「年収103万円の壁」の協議が、およそ2か月ぶりに再開された。所得税がかかるようになる「年収103万円の壁」をめぐっては、去年178万円への引き上げを主張する国民民主党に対し、与党は123万円への引き上げを決め、その後溝が埋まらない状況が続いてきた。

こうした中、新年度予算案の年度内成立を目指し、国民民主党の賛同を得たい自民党は非課税枠を「年収200万以下は160万円に拡大」「年収200万円超~500万円以下は25〜26年分の特例措置として10万円上乗せする」とする新たな提案をおこなった。だが、これに対し国民民主党の古川代表代行は「ボールは返ってきたけど、かなり暴投だ」と猛反発。

連立を組む公明党からも「不十分で有権者の理解は得られない」との声があがり、その後、公明党が非課税枠を広げる対象者をこれまでの年収500万円以下から
850万円以下に拡大し、4段階に分ける新提案をおこない、3党は近く再協議を行うこととなった。

「年収103万円の壁」の見直しを巡っては、これまでも課題との認識は持ちながらも与党が対応を怠ってきたことが、去年の国民民主党の躍進に繋がったにもかかわらず、自民党が引き上げに慎重な姿勢を見せることにSNS上を中心に自民党への反発は高まっている。

ただ、国民民主党が求める178万円への引き上げでは7兆円~8兆円の税収減が見込まれていて、その穴埋めを国民民主党が提示できていないのも事実だ。自民党幹部はこう苦言を呈す「軽々しく豆腐みたいに簡単に1兆、2兆っていうよなぁ…」

国民民主党との協議と平行して、与党は「高校授業料の無償化」をめぐり、日本維新の会とも協議を続けている。教育の機会均等を図る高校授業料の無償化については、来年4月から私立高校の支援額を年間45万7000円に引き上げることなどで合意する見通しがついてきた。

ただ、維新の要求に応じて支援額がつり上がっていることに、自民党の萩生田元文科大臣は「サービス合戦でバナナのたたき売りのようだ」と皮肉り、「中身は全然議論しないまま、野党の言いなりに押し倒されて予算成立を急いだということになれば、将来に遺恨を残す」と批判する。

実際、高校授業料の無償化をめぐっては、次のような課題が指摘されている

<高校授業料無償化の課題例>
▼浮いたお金を塾代に充てるなど受験戦争が過熱。子どもに新たな格差が生まれる
▼私立高校は授業料を引き上げ財政余力をつけ、設備の充実や優秀な教師を確保。私立と公立に新たな格差が生まれる
▼公立・私立の選択肢は地域によって異なり、国が全国一律で支援すべきものではない

維新の吉村代表が大阪府知事であることを踏まえ、自民党内からは、こんな恨み節も聞こえてくる「教育無償化を先行してやっている大阪は、この影響で財政が相当悪くなっているようだ。その肩代わりを国にやってもらいたいという思いもあるんだろ」(自民党関係者)