■「封印しようと思っていた」被災地で撮影し上映することへの迷い
今は東京で暮らしているそのみさん。劇場公開に合わせ帰郷しました。石巻駅周辺の商店街は高校時代を過ごした思い出の場所です。

佐藤そのみさん:
「(高校時代は)映画演劇部という部活に入っていたが、ほぼ演劇しかやらない部活だったので。映画が撮りたかったので放課後とか休みの日に演劇部の友達何人かに出てもらって、自分でカメラを回してこの町で撮っていました」
「春をかさねて」の撮影でも大川に加え、この町もロケ地に選びました。
佐藤そのみさん:
「ここで撮っていました。絶対ここ。もう駐車場として使われなくなったのかな。撮影したのが5年半前。5年半でこんなに変わるんですね、びっくり」
実は当初、震災をテーマに映画を撮ること自体に迷いがあったと言います。
佐藤そのみさん:
「なんか悪いことをしているみたいな気持ちもありました。見る人によっては歓迎されないかもしれない。傷つけてしまう可能性もある描写もあるので。けれど、ここで頑張らないと次に進めないとも思っていました。ちゃんと正面から描き切ったら何か変わるかもしれないと思って」
完成した後も、最初は誰にも見せずに作品を「封印」しようとも考えました。しかし、全国各地から上映依頼が舞い込み、自主上映を30回以上重ねるうちに気持ちが変化していきました。

佐藤そのみさん:
「封印したままだと、また私の人生が止まってしまうんだろうなと。最初は私そのものだったような映画だったけど上映を重ねていくうちに私の手元から離れていってくれて、東北で震災を経験していない人たちにもいろいろな形で共感し楽しんでもらえる作品なんだということが、ようやく客観的に見られるようになってきました。自分が想像していないような反応をもらえてとてもうれしかったし、いろいろな人と映画を通してコミュニケーションをとることで丸くなっていったのかな」
映画作りが楽しいという気持ちも確かなものになったと言います。