遺族を遠ざける学校や教育委員会

翔さんの母 千栄子さん
「亡くなったことをクラスメイトに伝えられずにいた翔君の気持ちをどのようにお考えですか?」
中学校の校長
「申し訳ないですけど、ここでは答えを控えさせてください」
千栄子さん
「翔君に対するいじめはあったんでしょうか?」
中学校の校長
「申し訳ないですけど、ここで答えるのは控えさせてください」
泉南市教育委員会 指導課長
「われわれも調査を受ける立場になるなかで、あのときこう言ってましたよねという話が今後またいろいろ出てくるわけです。個人の判断の中での反射的な答えはできづらい状況になっていることはご理解ください」

また、教育委員会は翔さんと学校のやりとりを記録した文書を遺族に開示したが、すべて黒塗りだった。「調査に支障が出る」という理由だ。
シングルマザーの千栄子さんは、高齢者施設で看護師として働いている。7年前に離婚した元夫から養育費の支払いは滞ったままで、1人で働きながら2人の息子を育ててきた。

仕事が終わると週3回、透析治療を受けている。難病の「多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)」を患っているためだ。腎臓に水がたまった袋が無数にでき、お腹に膨らみが出てくる病気で、高齢になると腎不全になる人がほとんどだという。透析治療は毎回3時間もかかる。
2023年3月、翔さんの一周忌。翔さんは亡くなる2日前、「ママには借りがある」と言って千栄子さんの肩をもんでくれたそうだ。忙しい母親を気遣って気丈に振舞っていたのかもしれない。

千栄子さん
「やっぱり申し訳ないなという思い。日々謝っている毎日です。彼の笑顔を壊してしまったし、幸せにしてあげられなかった。彼の居場所を見つけてあげられなかった」
翔さんの黒塗りの記録を隠さずに見せて欲しいと、千栄子さんは教育委員会と交渉を続けてきた。この日役場を訪ねると…

千栄子さん
「指導課長はいらっしゃいますか?」
職員
「指導課長は代わっているんです」
千栄子さん
「代わっているんですか?岡田教育部長を出してください」
職員
「岡田教育部長も異動になっておりまして。4月で異動になっているんです」
翔さんの死からおよそ1年が経ち、千栄子さんに対応していた教育委員会の担当者が知らない間に代わっていた。
千栄子さん
「中学の校長先生はどうなっているんですか?」
現教育部長
「代わっています」
千栄子さん
「校長先生も代わっているんですか?教頭先生はいらっしゃるんですか?」
現教育部長
「教頭先生も代わっていると思うんですけど」
千栄子さん
「みんな代わっているじゃないですか。去年の翔君のことを知っている人が誰もいないじゃないですか」
現教育部長
「一応ちゃんと引継ぎという形で...」
黒塗りの部分を開示するのかについて明確な回答はなかった。
10か月前、「診断書があれば転校の判断ができた」と話していた岡田前教育部長は...

千栄子さん
「代わられたんですか?こちらに」
岡田前教育部長
「4月1日にこちらに異動になりました」
千栄子さん
「どうして代わられた?」
岡田前教育部長
「それはわからないです。異動になりました」
千栄子さん
「翔君のことを誰もわかっていないじゃないですか」
岡田前教育部長
「私、その件についてお話できる立場ではございませんので。それは教育委員会の方で確認いただけましたら」
子どもが何度もSOSを発し、命を絶っていても、学校や教育委員会は担当者の変更も伝えず、遺族を遠ざけ続けた。