13歳の死 向き合う手立ては
2024年5月、松波翔さんが自殺に至った経緯を調べていた泉南市の第三者委員会が報告書をまとめた。関係者に聞き取りを行い、生徒たちにアンケートを取るなど、調査は1年4か月にわたった。
報告書では、翔さんが同級生や上級生から「死ね」や「少年院帰り」などと言われたり、背中を殴られたり、数々のいじめを受けていたと認定。中学校の担任は殴られたことを「あいさつ程度のスキンシップ」と判断していたという。

小学校から中学校への引き継ぎ書には、翔さんは「事実ではないことを主張する」などと書かれていたことも判明。翔さんや母親の訴えに対して、中学校が先入観を持っていた可能性があると指摘した。
そして、学校のいじめ対応は不十分だったとしたうえで、自殺の原因について、こう指摘した。
報告書
「当該児童は、小学生時から中学校にかけて何度も教員との関係の再構築を試み、教員を信じようと行動しているが、幾度となく不信感を抱き、そして幻滅させられる結果となった」
報告書が泉南市に提出されて6日後、教育委員会が会見を開いた。

泉南市教育委員会 冨森ゆみ子教育長
「児童、生徒、保護者および関係のみなさまには長期にわたりご負担をおかけしたこと、そして市民のみなさまにご心配をおかけしましたことを心よりお詫び申し上げます」
冨森ゆみ子教育長が口にしたのは、生徒や保護者、市民への謝罪だった。
泉南市教育委員会 冨森ゆみ子教育長
「子どもの尊い命が失われたという重大な事実と真摯に向き合い、二度と同様の事態を起こさぬよう、再発防止を図るための取り組みに務めて参りたいと考えております」

教育委員会は、翔さんの自殺の原因として指摘された点について「厳粛に受け止める」と述べた。ただ、千栄子さんの目には、13歳の子どもが亡くなったという重い事実に向き合っているようには感じられなかった。
翔さんの死をきっかけに千栄子さんは、子どもが助けを求めた時に大人や社会は何ができるのか答えを探すようになった。

千栄子さん
「そのまま100%子どもの言葉を受け止めることやと思う。この子はこんなことを言っている、なんでこんなことを言っているんやろって素直にそれを受け止めて、問題解決や分析をしていく。ある程度の権限を持っていて、寄り添ってくれる相談機関が必要」
千栄子さんは学校や教育委員会とは独立した子どもの相談窓口を設置するよう泉南市に要望。2024年9月。山本優真市長と面会することになった。
面会で、市長は「2024年度中に条例を改正して、子どもの声を直接聞き、調査をして、問題があれば学校側に勧告もできる公的第三者機関を設置する」と明言した。

千栄子さん
「第二の翔君を生み出さないように、翔君が動いているのかなと思うと、翔君ってすごいなって本当に思います。亡くなって動いたからと言って、心から喜べるのかというと、どちらかと言ったら腹立たしいです。子どもの命が亡くなる前にしてほしかった」