■「この戦争に真実はない」多数の軍人がロシア軍を去った

記者
「戦場にいるロシア兵はどのようなことを考えていますか?」

フィラティエフ氏
「ロシア軍の部隊は、これまでのように活発ではありません。なぜかと言うと、私のような、参戦して経験を積んだけれど今後の参戦を拒否する兵士が大勢いるためです。この先、軍事行動が当初のようなペースで進まないのは明らかです。多数の軍人が軍を去ったからです。なので、今では受刑者、年金生活者を集めようとしています。

私がこれ以上参戦したくない理由のひとつが、『この戦争には真実はない』とわかったからです。何の目的も達成しない、誰も救うことはないとわかったからです。私自身が目にするものは、街や平和な生活、それら全てが壊されている様子です。真実がないから、多くの軍人が去っていきました。これ以上参戦したくないと思ったのです」

そして、プーチン大統領についてはー

フィラティエフ氏
「ロシア社会、またロシア軍では大半の人々が不満を抱えています。ただロシアでは、私たちは抵抗の仕方を知らない、という仕組みになっています。私たちが選んだわけではないけれど居座っている政権は、『従わない者は刑務所に入れるよ。口を封じるよ。殺すよ』と言っているのです。軍の大半はプーチンを嫌っているし、9割は軍に勤めたことのない(ショイグ)国防相を笑っています」

インタビューの21日後、フィラティエフ氏の証言は具体的なものとなって、私たちは目にすることになる。

プーチン大統領は部分的な予備役の動員を表明。各地で抗議デモが行われ、国境には国外に脱出を図るロシア人が列を作った。

■フィラティエフ氏が顔も名前も出してロシア軍の内情を証言し続ける理由


フィラティエフ氏は、SNS上に141ページに及ぶ手記を公表し、ロシア軍の内情を暴露している。私たちのインタビューにも、顔も名前も出して証言してくれた。ロシアで軍への批判は「偽情報の流布」として犯罪扱いされるにもかかわらずだ。


それでも証言を続ける理由を尋ねると、フィラティエフ氏は迷うことなくこう答えた。

フィラティエフ氏
「ただ一つの目的のためです。一刻も早く戦争を終わらせるためです。ひとつとして良いことは得られません。この戦争には全く、何の意味もありません