今年&17歳初レースは1500m

1月24日に東大阪市で行われた記録会。12時過ぎから行われる1500mに出場するため、久保は朝4時半には起きて、集合時間の7時には会場に到着していた。チーム全体のストレッチやジョグ、動き作りを30分間行うと、東大阪大学敬愛高校オリジナルのメニューを始めた。

50m走2本のタイムを計測。野口監督は、このメニューで選手たちのその日の調子の良さが分かるという。アップ用のシューズでの計測にも関わらず6秒9台で駆け抜けた久保は、「めっちゃいい」と笑顔。野口監督も「今日はアスファルトなので、6秒9とか7秒ぐらい。冬にしたらものすごく調子は良いと思います」と話した。ちなみに50mの日本記録は1985年に小西恵美子さんがマークした6秒47だ。

軽食や休憩を挟み10時30分からレースに向けて、再びアップを開始。ストレッチの際、開脚が180度開く柔軟性は、父から教えてもらい、お風呂上りに毎日続けてきた努力の賜物だ。そして、いよいよ12時から1500mのレースが開始。気温11度、標高642mの生駒山から「生駒おろし」と言われる風が3m近く吹く中、久保は4分19秒51のタイムでフィニッシュ。自己ベストの4分13秒75には及ばなかったが、このタイムに野口監督は「この風の中、この時期で4分20秒を切ったのは、ナイスランで今日の合格点だと思います」。久保本人も「初めてのトラックレースになって、まずは1500mをしっかり走れるようにしたいという気持ちで臨んで、前半から自分のリズムを作って走ることができた。去年の3月は4分30秒かかっていたので、それに比べてまだ1月ってなった時に、このタイムはいい方かなと思います」と1年の成長を感じている様子だった」

ストレッチを行う

レース後には小学生から高校生まで様々な世代からサイン攻めに。数えただけでも60人を超えたが、嫌な顔ひとつせず、丁寧に笑顔でサインを書いたり、記念撮影に応じた。今や誰かの憧れの存在にまで成長した久保だが、決して驕ることはない。

「こうやって自分が日本記録を出したり、勝つことが出来たり、結果を残した時に憧れてもらえるっていう事は嬉しいことですし、憧れてもらっているからこそ、もっと頑張らなきゃと思う事ができるので、そう感じてもらっている部分はとても嬉しいです」

高校新記録どころか日本新記録、日本選手権優勝と大会で優勝する度に、レース後に語る目標が右肩上がりにどんどん高く設定されていった2024年。その中で果たせなかったのがパリオリンピック™出場だった。だからこそ、今年行われる東京世界陸上への思いは何よりも強い。参加標準記録は1分59秒00。久保は突破まであと0秒93に迫っている。

「自国開催ということで、東京でたくさんの方に見ていただける事はすごく嬉しいし、高い目標ではあるんですけど、必ず出場してメダルを獲るということを意識して取り組みたいなと思います」

2月下旬には海外でのレースにも出場し、世界と戦う経験を積んでいく予定だ。800mの日本人メダリストは1928年のアムステルダム五輪で銀メダルを獲得した人見絹江が最後だ。

「愚かなりとも、努力を続ける者が最後の勝利者になる」

人見は生前、この言葉を遺した。去年以上の成績を残し、さらに歴史に残るシーズンへ。右肩上がりなのは記録だけでは無かった。

「身長伸びていますよ。168.1cmになったので、170cmまでいきたいなって。朝が測り時ですね(笑)」

カメラをかつぎ笑顔

■久保凛(17)
2008年1月20日生まれ、和歌山・串本町出身。潮岬中~東大阪大学敬愛高。身長168.1cm。小学6年生までは、サッカークラブに所属し、中学から本格的に陸上競技を開始。3年時に全日本中学陸上女子800mで優勝。24年日本選手権女子800m決勝でも2分3秒13で初優勝。7月15日の関西学連・長距離記録会(奈良・橿原公苑陸上競技場)で1分59秒93の日本新記録をマーク。05年に杉森美保が記録した2分00秒45を上回り、19年ぶりの記録更新。日本女子初の2分切りを果たす。