目立たせるも控えめにするもヘアメイク次第――物語の展開に合わせた計算とは

キャラクター作りにおいて忘れてはいけないのはヘアメイクの存在。メイクや髪型が生徒たちの個性を表すのは言うまでもないだろう。本作でヘアメイクを担当する久野氏は、「性格や趣味、席順や友人関係などを踏まえて29人分のイメージを提案しました。プロデューサーと監督とともに座席順に1人ずつ、全体のバランスを見ながら前髪の短さや髪色、他の生徒との被りがないかをチェックしていきました。それも誰か1人が浮いてしまうことのないように。さらに進学校という設定上、派手になりすぎないように調整しています」と振り返る。これまでの学園ドラマと異なるのは、キャラクター作りを目的としたキャッチーな髪型を避けていること。SNSなどでリアルな高校生のヘアスタイルを参考にしつつビジュアルを作り上げている。

久野氏率いるヘアメイクチームは、撮影のたびに生徒29人のビジュアルがぶれないように仕上げていくが、イメージが固まるまでは苦悩の連続だったという。「今はすべての設定が決まって落ち着いていますが、台本だけをヒントに29人分のイメージを作るのは実はとても果てしない作業でした。そのキャラクターがどんな人なのか、どんな生徒と仲が良いのかも実際のお芝居を見ないとわからない部分も多くて…。まるで自分の想像との答え合わせのようでした」と、苦労を明かしてくれた。

映像に大きく映ることもある俳優の顔はメイクによってその印象が大きく左右され、目立たせるも控えめにするも、ヘアメイクの工夫次第。久野氏によると、そういったビジュアルの作り込みは物語の展開に合わせてすべて計算されているのだという。「台本が最後まであるということもあり、今後の展開も含めて、どのキャラクターをどこまで目立たせるかというのを、監督と相談しながら決めています。作品にもよりますが、序盤ではあまり目立たなかった人が後半で…という可能性ももしかしたらあるかもしれませんね」と驚きのビジュアル作りの裏側を教えてくれた。

学園ドラマの制作における衣裳、持道具、ヘアメイクの細部へのこだわりは、登場人物の個性を引き出し、それぞれが調和を取り合うことで物語全体をリアルに際立たせる。本作でも29人の生徒それぞれが持つ多様な魅力を、視覚的に表現するプロフェッショナルたち。舞台裏での緻密な工夫と情熱によって魅力的な世界観が築かれ、作品に奥行きと説得力を与えている。