身につけるものを“きれいにしない”…持道具がこだわるリアルな学生グッズ

制服には生徒全員が同じ制服を着ることで、仲間意識や一体感が生まれ結束力が高まるほか、生徒間の経済的・社会的な差を目立たなくする効果がある。だが、ドラマの演出においては一体感を持たせながらも、29人の個性を際立たせなければならない。そこで持道具・波多野氏の腕が鳴る。生徒たちが持つアイテムがキャラクターを際立たせる要素になっているのだ。
例えばスクールカバンには、生徒の趣味や部活に合わせて多種多様なキーホルダーが装飾されている。波多野氏曰く、なるべくリアルに見せるべく実際のミュージシャンやグループなどのグッズを使用しているという。「普段のドラマ制作ではあまり使用しないのですが、1つひとつ許諾を取っています。キーホルダーを目立たせるために、カバンはどこでも買うことができるシンプルな物を選びました」と、自身の制作経験を振り返りながらこだわりを明かしてくれた。
さらに、波多野氏は続ける。「通常ドラマの撮影では俳優さんに負担がかからないようにカバンの中身はあんこ(形を整えるもの)を入れて膨らませつつも軽くしているのですが、本作では監督の意向で教科書が入っているリアルな重さを再現。なので、生徒たちからは『重いです!(笑)』と言われることもあります」と、学生時代を想起させる裏話も。荷物の重さが芝居の動きに直結し、よりリアルな高校生を描くことができるのだ。
身につけるものを “きれいにしない”というのも波多野氏のこだわり。生徒たちは3年生という設定のため、身につけているものは本来であれば3年ほど使用したもののはず。「そういった使用感を出すためにキーホルダーに汚しの加工をしたり、皆さんが履いている靴も何回かわざとかかとを踏んでもらったり。通常ドラマでは1日の撮影が終わったあとに靴をきれいに磨くようにしているのですが、今回はそれも控えめにしています」と、生徒たちにとって愛着のあるアイテムを作り出す技が飛び出した。