会話が心地よい「スロウトレイン」

倉田 「スロウトレイン」(TBS)。こちらも脚本が野木さんなので、私の野木さん好きがバレバレですね。

両親と祖母を交通事故で早くに亡くした、3人のきょうだいの話です。私も長女なので、松たか子さん演じる長女の、ちょっと勝手に気負っているところはわかるような気がします。さらに、3人それぞれの生き方が素敵で、その3人が絡んだときにも素敵な空気があふれている作品でした。

3人の仕事ぶりにも個性があって、本の編集者と江ノ電の保線員と、仕事が長続きしない妹。いろいろな働き方をしながら、それぞれ干渉したりしなかったりがリアルで、うちの家族でもこういう話はありそうだと感じました。

あと、松坂桃李さん演じる弟が、編集者である長女が担当する男性の作家と恋仲になる。そういう展開も意外性がありつつ、姉妹の反応がすごくナチュラルで、驚き過ぎもしないし、無視するわけでもないという距離感の描き方も絶妙でした。

田幸 野木さんの描く人と人との距離感や、会話のかけ合いがすごく心地いい。大きなことは起こらないけれど、きょうだいや周りの人とのやりとりを見る心地よさがずっとあって、お正月にちょうどいい感じでした。

最終的にきょうだいは離れていくけれど、それでもちゃんと集まる家族のあり方、中高年の女性がひとりで生きるのもいいよねと思わせてくれる。今、中高年でひとりの女性は多いので、希望のある、孤独だけど孤独ではない、心地よい、その人なりの幸せの描き方がいいと思いました。

影山 毎年正月に、きょうだいの成長を描き続けてほしいぐらいすばらしいドラマでした。家族の温かさと同時に、孤独にもちゃんと向き合い、だけど暗くなり過ぎずというところですよね。エンディングはドラマだからこそのハッピーなものですが、僕はあれぐらいの甘さは欲しい。目をあけたらみんなが集まっていてというエンディングは、毎年やってもらえるなら、毎回これでいいとすら思います。