取材を終えて

在阪局の記者として阪神・淡路大震災の報道に関わる中で、「死者6434人」という無機質な数字が、この震災の被害に“線を引いている”と感じてきました。震災が残した爪痕の深さは、6434という数字で語れるものなのか。その数字の外にいながらも、震災で人生を狂わされた人々の悲しみや苦しみが捨象されていないか。その疑問が、今回の取材を始めた原点です。

“遠因死”遺族が銘板掲示を申し込む際に記した言葉や、取材に応じてくださった遺族が語る言葉を目の前にすると、胸が張り裂けそうになります。あの震災がなければ…という思いを抱えながら生きてきた故人や遺族が、どれだけ多くいるのだろうと思いを馳せずにはいられません。

どこかで“線を引く”ことは必要です。しかし、その線の中にいる人だけではなく、“周縁”にいる人々の悲しみや苦しみにも寄り添うことが、メディアや社会には求められていると思います。