アメリカが経済成長し、他国が減速すると“トータル”でどうなる?
「“アメリカ一強”の理由より前に、金融引き締めでアメリカがたくさん利上げをしたのに、リセッション(景気後退)にならなかった謎から考えるべきです」
「シカゴ大学のラグラム・ラジャン教授は、引き締めによる実体経済へクールダウンという伝統的な経路よりも、為替市場など金融経済に与える影響が大きいとしています。国内の経済への影響より、為替(ドル高)を通じた他の国の経済に与える影響の方が結果的に大きいという主張です」

「アメリカは自国経済を見ながら利上げできますが、他の国はドル高の裏側の通貨安を防ぐためにアメリカよりもアグレッシブに利上げをしなければいけなくなる」
「例えば欧州中央銀行(ECB)はアメリカの利上げに追随する形で利上げをして、景気が悪くなってしまいました。日本も円安を取るか利上げを取るかで苦労をしました」
さらに景気減速懸念が出ている他国から投資マネーがアメリカに流入することで、結果的にアメリカ経済はクールダウンではなくさらに強化されるという循環が起きている可能性があるというのです。
「これがFRBにとって予想外なのか、計算の範疇なのかはなかなか読めないところではあります」

「ラジャン教授はこうして金融政策が波及する効果を世界全体で見て、トータルで良いか悪いかを考えるべきだと指摘します。アメリカのGDPは世界全体の26%しかありません。アメリカが成長して、他の国は減速していることを足し算すると、私はネットでネガティブの可能性の方が高いと見ています」