2025年 今年のキーワードは!?

さて今年、何に注目すればいいのか。アナリスト各氏に「今年のキーワード」を書いてもらった。

――やはりトランプ氏をイメージした言葉が多いという感じだが、井出さんの「胸先三寸」。これはトランプ氏の「胸先三寸」ということか。

ニッセイ基礎研究所 チーフ株式ストラテジスト 井出真吾氏:
それもそうだが、習近平氏であったり、プーチン氏であったり、いろんな国の首脳陣の「胸先三寸」でいろんなことが決まり、その結果、政治は左右に揺さぶられ、マーケットは上下に揺さぶられるというイメージ。

――専制国家が割拠している世界になってきたということか。

ニッセイ基礎研究所 チーフ株式ストラテジスト 井出真吾氏:
その中で日本がどう立ち回るか、特に中国との付き合い方、アメリカとの関係も含めてどうやっていくのかというのは、非常に難しいかじ取りを迫られている。

――一番株価に影響があるのはトランプ氏だと思うが、一番のリスクは何だと思うか。

ニッセイ基礎研究所 チーフ株式ストラテジスト 井出真吾氏:
貿易摩擦、関税の引き上げ。最近もいろんな報道が相次いでいるが、実際にトランプ政権が発動するのかどうか、いつどのタイミングで、どのぐらいの規模で実施するのか、これが一番の鍵だが、こればかりは読めない、読み切れない。トランプ氏が発動した政策に対して中国側がどう対応するのか、これも大きな鍵になると思う。

――その一方で「いやいや、そんなにトランプ氏怖がることはないのではないか」というのが小髙氏の「トランプ政権を怖がるな」。

野村証券 シニア・ストラテジスト 小髙貴久氏:
はい、そう思います。2017年の第一次トランプ政権のときは、スタートダッシュの前半部分では、減税などの政策が出てくるので、実際に当時の株価は上がっていた。2024年は日本もアメリカの政治体制がどうなるかわからなかったが、政治体制は2025年に関して、既にわかっているという点では怖がる必要はないと思っている。

――トランプ氏もアメリカ経済が弱くなることをしようとしてるわけではないと思う。

野村証券 シニア・ストラテジスト 小髙貴久氏:
そうですね。ビジネス第一と考えているから、企業の業績を悪化させて、これから自分の勢力図である政党・共和党などが弱くなるような政策を、国内経済ですることはないと思っている。その部分では怖がる必要はない。

――黒瀬氏は「新世界秩序」。これはトランプ氏が作っていこうとしている新世界秩序が、株式市場にとってはフェイバブル(好ましい)ということか。

りそなアセットマネジメント チーフ・マーケットストラテジスト 黒瀬浩一氏:
そうですね。トランプ氏の政策に関して非常に悪く言う人がいるが、格差とか社会の分断で動くグローバル化の悪い側面を修正するという意味で、方向性は間違っていないと思う。そういう意味では新しい秩序を作ろうとしている。我々日本が考えないといけないのは、アメリカはもう方向性を切った。アメリカ国民の総意である「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」。日本もそこに貢献する形で一緒にもう1回、世界経済を修正することが向かうべき方向性と思う。

――逆らうのではなく、トランプ氏と一緒にやっていくという舵を切ることが大事ということか。

りそなアセットマネジメント チーフ・マーケットストラテジスト 黒瀬浩一氏:
そう思う。それができる国は良い国になって、経済も良くなる。逆に対立する国は経済も市場も悪くなると見ていい。

――その一方、アメリカ経済の悪い部分にも目を向けた方がいいのではないかというのが山口氏の「米経済二極化加速」。

SMBC信託銀行 投資調査部長 山口真弘氏:
いいところはいいと思うが、悪いところはすごく悪くなってきていると、アメリカ経済を捉えている。金利が高止まりしている影響が低所得者層に出てきているのは明確。

――アメリカのクレジットカードや住宅ローンの新規延滞率が上昇してるというグラフを用意してもらった。

SMBC信託銀行 投資調査部長 山口真弘氏:
アメリカ人は住宅ローンに関しては、9割ぐらい固定金利で借りるので、金利が上がっても影響があまりないことは確か。ただクレジットカードは変動金利になるので、金利が上がった影響がもろに出る。しかも富裕層だけではなく、低所得者層も合わせてということになるので、ここが上がってくるということは日々の生活が苦しくなってきている層があると思っている。

――つまり、こういう(新規延滞率)部分に光が当たると、相場は崩れることがあり得るということか。

SMBC信託銀行 投資調査部長 山口真弘氏:
全体としては、まだ良いということになるが、その良いところが悪くなっていくとなった時には、危ないということだ。

――アメリカ経済の先行きが良いのか悪いのかということが、アメリカの株価、ひいては日本の株価に直結してくるが、2025年のアメリカ経済は、基本的には順調にいくと見ていいのか。

りそなアセットマネジメント チーフ・マーケットストラテジスト 黒瀬浩一氏:
順調にいくと見ていい。悩ましいのは景気が良いから、金利が下がらない。だから株が下がるという解釈は難しい。逆に、景気がいいから金利を下げる必要がない、株が上がっていいと、どこかの時点で解釈が変わってくると思う。

――5%ぐらいまで、長期金利が上がろうとしてるのに、株高だけが進行していることは整合性が取れているのか。

ニッセイ基礎研究所 チーフ株式ストラテジスト 井出真吾氏:
そこが、今一番の心配の種だ。簡単に言うと、今アメリカ株は、アメリカ国債よりも利回りが低い。リスクは明らかに株の方が高いのに、利回りは低い株を持つ理由を見いだしにくい。

なぜみんな株を持ち続けるか、さらに買うかというと「アメリカの景気がいい、今後もよさそうだ。アメリカ企業の業績はもっと良くなる、表面上はアメリカ株割高に見えるけれども実態はそんな割高じゃない」というのが株式市場の見方だと思う。それが正しいかどうかは今後次第。

――アメリカの中でもバフェット氏は今「株売って、現金化した方がいい」と言っている。

ニッセイ基礎研究所 チーフ株式ストラテジスト 井出真吾氏:
最近、債券投資家になっている。バフェット氏の見方が正しいのかもしれないし、今現在の株式市場の見方が正しいのかもしれない。これはトランプ政策にも依存するし、地政学リスクにも依存するということだと思う。

――アメリカ株にバブルの部分があって、ここが崩壊する心配はないのか。

SMBC信託銀行 投資調査部長 山口真弘氏:
そこのバブルを生み出しているのはAIになると思う。去年2024年もあったが、半導体大手の決算をどう評価するか、それによって株価が大きく上下するという面はあると思う。

――一方の日本経済。新しい成長分野は、日本には見つかってきていると言えるか。

野村証券 シニア・ストラテジスト 小髙貴久氏:
いや、新しい成長分野はなかなか難しいと思うが、従来の企業が、再び復活してくるというのは大きなキーワードだと思っている。去年2024年は自動車や、機械の部分が業績でも手こずっていた面がある。

――操業停止などもあった。

野村証券 シニア・ストラテジスト 小髙貴久氏:
はい。一方でインバウンドなどの国内需要も大きく成長している。そういう分野では「継続して良い」という業態・セクターなどはあると思う。

――セクターごとに、どれだけ業績上積みできるかということが焦点だということか。果たして2025年どうなるのか。また来年に答え合わせすることを楽しみにしている。

(BS-TBS『Bizスクエア』 1月11日放送より)