■犯罪や加害者にどう向き合うか…問われる社会の姿勢
だが、世間の目は依然として冷たく、厳しい。
加害者たちのその後は週刊誌でたびたび記事となり、見出しには「犯人たちの更生は完全失敗」「鬼畜行為のすべて」「野獣」などとセンセーショナルな言葉が並ぶ。事件から36年が経つ現在もYouTubeでは事件に関する新たな動画が配信されるなど注目を集め続けている。インターネットでは実名や写真がさらされ、間違った情報も多く出回っている。

凶悪な事件が起きるたびに「こんなやつ死刑にしろ」「刑務所から一生出すな」などと感情的な論調が飛び交う。非道な行為の前に、加害者に向ける理性の力は失せる。だが、感情論だけでは、問題は解決しない。死刑判決にならなければ、加害者はいつか社会に出てくる。刑罰だけで更生も反省も不十分なまま社会に出て、支援もないまま放置されれば再犯を繰り返してしまう可能性は高い。自分や家族だけは、その被害に絶対に遭わないと断言できる人はいないだろう。社会の側が犯罪に、そして加害者にどう向き合うか、私たちの姿勢も問われている。
立命館大学・森久智江教授(犯罪学)
「よく『犯罪者に人権はない』『犯罪者がサポートを得られるのはおかしい』という議論があるが、そうではなくて犯罪に至る前の段階でその人が権利や保障を受けられていなかったために、結果的に犯罪に繋がってしまったというところがある。多くの場合は、犯罪行為以前から満たされていなかった権利。犯罪を起こした人を支援していくことで、結果として再犯に至りにくい社会、新たな被害者を生まない社会を実現をしていくことは、被害者の権利の保障というところとも全く別の話として必要なこと」