▼意見陳述(1)男性Aさんの妻「もう亡くなっていると聞いたとき、頭が真っ白に」

「私の夫(男性Aさん)は子どもの頃から責任感が強く、私にも子どもの頃の苦労話をよく話してくれました。
兵庫県の会社に就職し、以来55歳で亡くなるまで37年間実直に働いてきました。私とは10年前に知り合い、その後結婚しました。私は再婚で子どもがいましたが、夫は広い心で受け止めてくれ、時には厳しく時には優しく親子として親身に接してくれました。子どももお父さんができたと喜んで慕っていました。
私が入院をしたときには、面会時間ギリギリまで毎日お見舞いに来てくれる優しい人でした。
兵庫県から九州に転勤となり単身赴任をすることになった夫は、当初新幹線で行き来していましたが、コロナ禍もあり、週末は車で片道8時間かけて帰ることが増えました。
普段は金曜の仕事終わりに九州を出発し、夜中の1時ごろ自宅に着いていました。お土産にくまもんのぬいぐるみやキーホルダーなどを買ってくれていたのを思い出します。
2022年11月25日の深夜、いつもより帰りが遅かったので私は心配しつつ帰りを待っていました。真夜中2時ごろに電話がかかってきたので嫌な予感がしました。
夫が事故に遭ったと聞き、さらにすでにもう亡くなっていると聞いたとき、頭が真っ白になりました。
一緒に旅行した思い出も新婚旅行で北海道に行った以外は、数えるほどしかありません。
もっと長生きして、定年後はゆっくり親孝行をしたり、夢だった家庭菜園を楽しんだりしたかったはずです。こういう形で夫の夢とわたしたちの暮らしが一瞬にして奪われたことが無念でなりません。
夫の事故では、当初報道では夫が最初の事故を起こしたかのように報じられ、(女性A)さんのご遺族に申し訳ないという辛い思いをしました。
その後の現場検証の結果、夫に責任はなく(※男性Aさんの車にSさんのトラックが衝突した第1事故)トラックの無理な車線変更が原因だった分かりました。しかし、2人の尊い命が奪われた事実は変わりなく、遺族の悲しみが消えるはずもありません。
被告人に対しては以下の事を問いたいと思います。

(1)最初に謝罪に来たとき、なぜ私の顔を見て謝らなかったのですか。下を向いて『すみません』ばかりで本当にすまないと思っているのか分かりませんでした。ちゃんと前を向いて謝ってほしかった。
(2)暗い高速道路で前を向いて走っていなかったのはなぜですか。普段からタバコを吸いながら漠然と運転をするのが慣習化していたのではないですか。

私の大切な家族は死んでしまいました。夫はもう帰ってきませんが、私は今も夫の夢を見ます。
あるときは夫が家に帰ってきてくれて『ちゃんとしとるか』と話しかけてきます。またあるときは『ただいま』と帰ってきました。
夫も死ぬ直前まで自分が死ぬとは思っていなかったでしょう。生きていたらもっともっとやりたいことがあったと思います。
被告人は自らの軽率な運転で2人を死に至らしめた罪の重さを、遺族の悲しみを背負って、一生事故のことを忘れずにいてほしいです。厳正な処分を求めたいと思います」

続いて検察側は、亡くなった(女性A)さんの当時交際相手だったNさんの陳述を代読しました。