■敵対関係から一転…転調の背景には岸田総理?


そもそも、両党の憲法観や安保政策は水と油だ。去年の衆院選前まで行われていた野党国対委員長会談で、維新は立憲から「野党ではない」と見なされ、「野国」の枠組みから外されていた。直近の選挙でも「野党共闘」に維新は含まれず、激しく競り合う関係だった。

それでもなぜ合意に至ったのか。去年の衆院選、今年の参院選で躍進した維新が、立憲にとって無視できる存在ではなくなったことが最大の理由だ。そして立憲のある関係者は、こう指摘する。

維新にとって一番大きいのはやっぱり安倍・菅なんだよ。岸田とやる気はない。と言うか、やれない

つまり、維新は安倍・菅政権とはパイプがあったが、岸田政権とはパイプがない。その間隙を突いたのが立憲「安住国対」だったというのだ。


実際、ある維新幹部は、こう吐き捨てるように言った。

「岸田政権がもっと真摯にやっていれば、こんなことにはなっていない」


今回の交渉も最初に声をかけたのは立憲側で、交渉が進むなか、立憲幹部は「維新が戦う集団だということは分かった」と手応えを語っていた。別の立憲幹部は「臨時国会が始まるにあたって、できるだけ野党が大きくまとまって与党にプレッシャーを与える。その形を作るのは野党第一党の責任だ」と強調する。

■“薄皮一枚”の合意 両党内から挙がる“賛否両論”


今回の合意について、両党とも党内は賛否両論だ。維新では「正直めちゃくちゃ迷惑ですよ。立憲はあかんでしょ、立憲だけは」と憤慨する大阪府議がいる一方、「協力できるところは協力していくべき。馬場さんに顔が変わったから維新としてもスタイルチェンジしやすいタイミング」との声もある。


党内の反発に配慮してか、維新幹部は「自分たちが主張している政策を飲み込んでもらっているわけやから、うちとしてはぶれてない。あくまでも国会内の部分的なこと」と予防線を張る。立憲幹部も「はっきり言って薄皮一枚。まだやってみないと分からないところも多い」と手探り状態であることは認める。

ただ、今回合意した6項目は、立憲・維新に限らず野党としてまとまることが出来るテーマばかりだ。憲法53条に基づく臨時国会の召集要求は、これまで野党がくり返し求めたものの、政府・与党は応じてこなかった。「召集要求があっても、憲法にいつ召集すると書かれていない」という政府・与党の説明に対し、国会法改正案で穴をふさごうとするもので、臨時国会冒頭に改正案を提出できれば、野党が一丸となって行動する呼び水となる可能性がある。

旧統一教会問題では、立憲と維新はそれぞれ被害者救済などを盛り込んだ法案を準備中だが、関係者によると一本化して法案を出す検討もされているという。

■内閣支持率も落ちる中で…与党幹部「油断できない」


一方、政府・与党側では、犬猿の仲だった両党の関係を見透かし、共闘が一部しか成立しないだろうとの観測もある。しかし、脅威に映るのも確かだ。

ある公明党幹部はこう話す。

「内閣支持率も落ちていて、政権に対する揺さぶりにはなる。一党一党だと弱い野党のままだから、束になっているのだろう。油断できない」

果たして今回の合意は野党共闘の新しい形となるか。臨時国会に注目が集まる。


TBS政治部野党キャップ
新田晃一