「500件以上の罪を犯した」受刑者へのインタビューは担当者に打ち切られ

私たちは特別に受刑者のインタビューを許可された。別室に向かうと、その受刑者はすでに椅子に座って待っていた。年齢は40代から50代に見える。年齢も名前も教えてはもらえなかったが、ギャングらグループの元幹部だという。

まず、このインタビューが本人の意思に反したものではないか、受刑者に確認した。彼は「なぜそんなことを聞くのだろう」という表情で「まったく問題ない」と答えた。

<エルサルバドルの公用語はスペイン語 淡々とした受け答えが続く>

ーーあなたはなぜ服役しているのですか?
「殺人・強盗・テロなどたくさんの罪を犯したからだ」

ーー何件の殺人に関わりましたか?
「わからない。2012年からの10年間で500件以上の罪を犯した」

ーーあなたの刑期は?
「期間は確定していない。神さまがお決めになることだ」

淡々と答える様子を見る限り、凶悪犯罪に関わった人物には見えない。
ただ、こちらを見定めるような目つきには、何とも言えない鋭さがある。

ーーここはどんな刑務所ですか?
「厳格な規律と厳しい服従を求められる刑務所だ。5つ星のホテルではない。自分の行動の結果なので仕方がないことではあるが、本当はここにはいたくない」

ーー待遇を改善してほしいと思いますか?
「もう少し運動をしたり体を動かしたりする機会はほしい」

ーー犯罪に関わったことを後悔していますか?
「後悔している。正直なところ、社会に対しても自分の家族に対しても、申し訳ないことをしたと思っている」

ーー外部の若い世代に伝えたいことは?
「エルサルバドルの若者やギャングに入りたいと思っている人に私が言えること…。ギャングに興味があったとしても関わらない方がいい。私は少年時代に、多くの間違いを犯した。その結果、日の当たらないような場所に閉じ込められて暮らすようになった。私は拘束され、神の裁きをうけ、法の定めに従わなければならない。子どもたちには、ギャングの勧誘に応えるな、あらゆる犯罪への誘惑に負けるなと言いたい」

<手錠をつけたままのインタビュー 建物の外にも多数の警備員がいた>

インタビューは担当者によって、ここで打ち切られてしまった。周りの刑務官の監視下の会話だったので、どこまで本音か分からない。ただ、考えながら自分の言葉で話している雰囲気は感じられた。

受刑者がいる施設に滞在したのは30分程度、外に出ると急に疲労を感じた。監房は清潔に保たれていたが、プライバシーのない無機質な空間だ。出所の当てもない受刑者たちが何を考えて生きているのか。想像することさえ難しい。