8月、米議会下院のペロシ議長が台湾を訪問。これに反発した中国は台湾を取り巻く海空域で軍事演習を展開し、中国軍による5発のミサイルが日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したと見られました。こうした中、9月29日、日中は国交正常化から50周年を迎えます。
ロシアのウクライナへの軍事侵攻などで新たな国際秩序構築の必要性が問われている今、日本は今後、隣国の中国とどう付き合っていけばよいのか。安倍内閣で安全保障担当総理補佐官、外務副大臣などを歴任した自民党の薗浦健太郎副幹事長が忌憚なく語りました。(聞き手:川戸恵子キャスター)

■“焦りが見えた”プーチン大統領演説


ーーウクライナへ軍事侵攻を続けるロシアのプーチン大統領は9月21日、国民向けのテレビ演説を行い、戦地に派遣する兵士について、軍人だけでなく、有事に招集される予備役を部分的に動員する大統領令に署名したことを明らかにしましたが…


自民党 薗浦健太郎副幹事長:
あの15分程度の演説はプーチンさんの焦りが垣間見えました。つまり、独裁国家でもあるにもかかわらず、すごく世論を気にして、「限定的な動員だ」「限定的なんだ」「軍事訓練を受けている人だけが動員されるのだ」ということを繰り返しおっしゃっていた。もう1つは、軍とか参謀本部の提案に応じて、「私はそれを支持する」という形だった。主語が自分じゃないんですよ。これ何て言うのか、自信がないのか、うまくいかなかった時のことも考え始めているのかわかりませんけれども、この2つのフレーズに僕はすごく違和感を持っていて。おそらくこのタイミングで動員令を出すはずじゃなかったんですよ。

ーーもっとできると?

自民党 薗浦副幹事長:
もっとうまくやれるはずだった。ところが、今、戦線という意味ではウクライナ軍が押し返している。ハルキウではどうにかなったというのを受けて、世論に抗しきれずに次の手を打たざるを得なかった。で、ここから先は僕の見立てになるのですが、おそらく、最新兵器も使えない。訓練も普段はやってない方々を、何人動員しようが戦局はあまり変わらない。
2014年のクリミアの大敗以降、ウクライナ軍がやってきたことっていうのは、NATO基準の武器をウクライナ軍の兵士がいかにして運用できるかということに重きを置いて、ウクライナ軍の兵士は、NATOの諸国から供出されている、例えばハイマースとかジャベリンとか、ああいう最新兵器をみんな使えるようになっているんです。そうすると、戦局が変わるのかと、これはハテナなのですよ。

その次にプーチンさんが打つ一手とは何なのか、その時にアメリカ含めて西側諸国がどういう反応しなきゃいけないのか。もっと言えば最後の一手を打たせないために、米・ロの対話、もしくはトルコの仲介努力をどうやってサポートするのか。ここにもうステージが移りつつあると思います。ですから、これを、何て言うのかな、もう泥沼なのだけれども、最後の局面に追い込まないために、手を打たせるための努力というのを、仲介努力をやっている国をサポートし、アメリカに対話を促すということを、今から日本はやっていかなきゃいけないと思います。

ーーやはりプーチンさんがこういうふうになったという意味、上海協力機構の会議の時にインドが「NO」に近いことを言い、中国もすごく冷たかったというところがありますよね、やっぱり中国とロシアってそのようなものなんでしょうか?

自民党 薗浦副幹事長:
インド自身は、いろんな立場がありながら今、QUAD(クアッド)に入っていますから、ロシアから大量に武器を買っていますけれども、立ち位置は少し今変わりつつある。中国も何だかんだと言いながらP5(国連安全保障理事会の)常任理事国なんですね。今回、先の大戦以降のこの国際秩序を、国連を中心にして紛争は平和的に解決しましょうと。それでも収まらないときは常任理事国、P5が出ていって、合意のもとに紛争を収めますよ、という立て付けできていた。

ところが、そのP5のうちの1つが当事者になってドンパチやったら、誰も止められないわけです。で、これはアメリカとかイギリスだけじゃなくて、中国にとってみても、そこが崩れたら国際秩序どうなるかわからないんじゃないかというところがある。やはり、今回のプーチンさんの言動というのは、いかにロシアが孤立する原因になったかということを考えると、中国もそんな軽々には全面的にロシアですっていうわけにはいかないと思いますよ。

ーー中国にとっても、アメリカ以外の世界秩序みたいなものはきちんと大事にするけども、やっぱり秩序って意味では、きちっとそれなりのルールを持つ方ですから。

自民党 薗浦副幹事長:
やはり中国は無茶苦茶なことしていますし、尖閣ではああいう力によって現状変更をしますけれども、外交の面においては、ある程度論理的に秩序だって物事を組み立ててくる国なので。そこは少しその距離を置くという判断はできているのだろうと思います。