体操、岡慎之助にかかる期待
10月には世界体操選手権がインドネシアで開催される。注目されるのは、パリ五輪でリオ五輪以来2大会ぶりの男子団体金メダル獲得に貢献し、個人総合、そして種目別の鉄棒でも金メダルを獲った岡慎之助だ。
2022年に前十字靭帯断裂の大怪我を負い、長期離脱を余儀なくされた。だが、そのリハビリの期間中、岡は上半身の力が最も必要な吊り輪に取り組んだ。日本選手の多くが苦手としており、「日本に必要なパーツだと思ってもらえる」と考えたからだ。「パリ大会でメダルを獲得したい」という強い思いから苦しい練習を耐えた。
その結果、表現や力強さに磨きをかけ、種目別の鉄棒では着地をピタリと決めて金メダル、平行棒ではミスのない演技で銅メダルに輝いた。内村航平の後継者として、今後の活躍が期待されており、来年10月の世界選手権はパリでの結果がフロックではなかったことを証明する場でもある。まだ、21歳、伸び代しかないだけに、パリ五輪よりもさらに進化した体操を見せてくれるはずだ。
やっぱり大谷翔平
そして最後は、やはり大谷翔平だろう。
今季、ドジャース移籍1年目でDHながら前人未踏の50‐50を達成し、ワールドシリーズでは左肩の故障をおして出場、2020年以来4年ぶりの世界一に貢献した。ナ・リーグのMVPを獲得するなど、記録ずくめのシーズンになったが、来シーズンは投手としての復帰が濃厚で、そうなれば「二刀流」に戻ることになる。
打撃では、素晴らしい成績を残したが、二刀流になった時、とりわけ投手の部分でどれだけの成績を上げることができるのか。サイ・ヤング賞を獲得するぐらいの活躍を実現すれば、ドジャースのリーグ連覇も見えてくる。日本はもちろん、世界中の野球ファンが大谷に注目する1年になるだろう。
<執筆者略歴>
佐藤 俊(さとう・しゅん)
北海道出身、青山学院大学経営学部を卒業後出版社を経て、93年よりフリーのスポーツライターとして独立。サッカーを中心にW杯は98年フランス大会から22年カタール大会まで7大会連続で取材継続中。他に箱根駅伝を始め陸上、野球、卓球等さまざまなスポーツをメインに執筆。現在、Sportiva(集英社)、Numberweb、文春オンライン(ともに文藝春秋)などに寄稿している。
著書に「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根5区」(徳間書店)など多数。
【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版(TBSメディア総研が発行)で、テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。2024年6月、原則土曜日公開・配信のウィークリーマガジンにリニューアル。