■反セクト法制定に対する議論を冷静に受け止めていただきたい

福本弁護士:
もう時間超過してるんですが、昨今の様々な議論、マスコミあるいは政府のいろんなところで議論されているところを見ながら、法律家として申し上げておかなきゃいけないことが1点ございます。
それは、最近フランスで2001年に制定された、反セクト法を日本にも持ち込むべきであるという議論がされているのは皆さんご承知のことと思います。

ただ、この反セクト法を正確に理解し、その時代的背景、実際の運用等をよくわかった上で議論されている方がどれほどいらっしゃるのか、私は疑問だと思っております。

そもそもフランスでこの反セクト法が制定された経緯は、1994年、1995年、1997年に太陽寺院という秘密主義の宗教運動がスイス、フランス、カナダのケベック州で数十名の命を奪う集団自殺事件。組織的殺人事件が起こったのがきっかけでございます。

この事件は、犠牲者の多くがフランス人でした。そのため、フランス国内で今の日本と同じような、ものすごいこういう新興宗教に対する憎悪の報道、議論、これが国会、議会というんでしょうか、そちらを動かしてできたのが、このセクト法です。そういう背景があるということをまず知っていただきたいんです。

これについて、日本国内でおそらく反セクト法について最も権威を持っておられるのが、山形大学の教授の中島宏教授がいらっしゃいます。この方が書かれた論文に「フランス公法と反セクト法」というものがございます。これ長々と学術的な、もちろん制定された背景とかいろいろ書かれているのですが、その中で最後に、この先生のご意見が書かれている。最後のページ。ページで言うと408ページ~409ページに書かれてる内容があるのでちょっとご紹介したいと思います。

「いずれにせよ、規模や教義の内容に関わらず、宗教であると主張する団体に対する規制は、信教の自由保障の観点から、慎重かつ冷静であるべきであり、背景にある事情や法的伝統を見ずして、反セクト法の安易な類似立法を求めるのは危険である」と。

その後、例の世田谷で設けられたオウム対策条例というのをちょっとあげた後、これについてこのようにおっしゃってるんですね。

「この特定の宗教団体を狙い撃ちにすることは、法的には政教分離原則から導かれる国家の宗教的中立性違反ならびに信教の自由の侵害になる恐れがあり、極めて望ましくない」とおっしゃっております。そして最後の締めくくりに、「宗教団体に対して対策が求められる際に忘れてはならないのは、まずは現行法で何ができるのかという視点であり、安易に新たな立法に頼るべきではない」と。

日本におけるセクト法の権威者がこのようにおっしゃっている。警鐘を鳴らしている。そのような危険な法律であるということを皆さんに認識していただきたい。

さらに、マッシモ・イントロヴィーニャという、イタリアの宗教社会科学者で、弁護士でもあり、保守的なカトリックグループの副会長を務めておられる方で、フランスの反セクト法の制定の際の議論にも加わった方なんですが、この方が最近の日本の状況を見て、このような投稿をされていました。

「カルト、フランスの法律は日本のモデルか」。これに対して副題として、「フランスの反セクト法は外国に輸出されるよりもむしろ国内で廃止されるべき失敗し、誤った法律である」と。こうおっしゃっているんですね。この中で、いろいろ議論されているんですけども、元々この反セクト法が成立すると、当時最大のターゲットにされてたとされるのがサイエントロジー、そしてエホバの証人だったんですが、実はこの20年間で1件もサイエントロジーやエホバの証人は適用されていない。むしろ弱小な、要するに有能な弁護士が雇えない弱小な教団が処罰を受けているという実態があるということも報告されております。

この間、このバッシモ氏の最後の結論として、このようにおっしゃっています。
「現実の犯罪を行った宗教団体と個人を起訴するのに特別な法律は必要ない。特別な法律は宗教の自由に対する危険を作り出すだけであり、問題を混乱させることにより、現実の犯罪を起訴するのより難しくするのである。反セクト法の20年間はそのことをふんだんに証明した。それは失敗と誤りのモデルである。進歩はそれがフランスで廃止されることによってなされるべきであり、決して他国に輸出されることによってなされるべきではない」と。

国内外の専門家は、このような見解を反政府セクト法に対して持っているということを改めて皆さんには理解していただいた上で、現在行われている反セクト法制定に関する議論を冷静に受け止めていただきたいと考えており、これは私の法律家としての意見でございます。

司会:
以上、質問ございませんでしょうか?本日はお忙しい中、本当にご集参くださり、感謝申し上げます。

本日、就任を発表させていただいた勅使河原も就任したばかりで、満足にお答えができなかった部分もあったかと思います。
また、今回の記者会見には、多くの参加申し込みがありましたけれども、会場の関係でご参加いただくことができなかったということもありまして、今後定期的に勅使河原の方がこちらの本部教会で囲み取材という形で記者様、メディア様の質問に答えさせていただきたいと思います。

ぜひ金平様もお越しいただければありがたいと思います。

福本弁護士:
ウェルカムです。

TBS「報道特集」金平茂紀キャスター:
なんで限られたメディアだけを入れているんですか。いま福本さんが仰っていた反セクト法についてもいろんな考え方があるということでいえば、こういう記者会見だって選ばれたメディアだけではなくていろんなところの人の声を聞くということをやられたらどうですか。囲みなんていう姑息なことをやらないできちんとした…

司会:
姑息ではなく、より近くメディア様と関わってそのなかでざっくばらんに、かつて30年前も多くのメディア様に大いに追われて全てを語ってきたというそういう経緯のある方ですので、その当時のことを思い出しながら今回も近しくメディア様に接しさせて頂きたいというそういう希望を持っております。
最後広報の方から恐縮なんですが、再度、お伝えさせていただきたいことがあります。当法人の全国の教団において誹謗中傷等の被害が止みません。現在優に2万を超えております。そのなかには殺人予告や皆様がいらっしゃるこの本部協会に対する爆破予告も実は先日、届けられました。そういう最中でございますので、ぜひ報道される際には過激な報道にならないよう重ねてお願い申し上げたいと思います。それではこれを持ちまして、本日の記者会見を終わらせていただきます。皆様、どうもありがとうございました。