「ご無沙汰してますー」電話の向こうから聞こえてくる関西弁は、10年前と全く変わってなかった。声の主は、元プロ野球選手で、現役時代、近鉄・ソフトバンク・オリックスで活躍した大村直之さん(48)だ。ネットで大村さんの新聞記事を偶然見かけ、日本に帰国していると知り、久々にメールをしたら、彼からすぐに電話がかかってきた。そんな律儀なところも、相変わらずだ。

高校・プロと輝かしいキャリア

大村さんは、兵庫・育英高校時代、夏の甲子園で優勝、1993年ドラフト3位で近鉄バファローズに入団した。2001年には1番バッターとしてチームを牽引し、12年ぶりのリーグ優勝へと導いた。その後、FAでソフトバンクへ移籍。2006年には165本のヒットを放ち、最多安打のタイトルを獲得した。2009年からはオリックスでプレーしたが翌年オフに戦力外通告を受け、静かにバットを置いた。

プロ野球生活17年間で積み上げたヒットの数は1865本。名球界には届かなかったものの、巧みなバットコントロールで右に左にとボールを運ぶ姿を覚えている方も多いのではないだろうか。

第二の人生は家族のために

現役引退後の大村さんの生活はあまり知られていない。彼は野球を離れてしばらくすると、子どもの教育環境がいいからと、海外に移住するという選択をした。

では、その移住先で何をしていたのか?

「特に何もしていませんよ。お金は野球をやっている時にコツコツ貯めてたんで、普通の生活はできます。海外に行ったのは、ちょうど子どもが中学生になる時で、英語圏に行って視野を広げるのがいいかなと思ったからですわ。」

酒もほとんど飲まず、派手な遊びもしないで地道に蓄えをしてきた堅実な大村さんだからこそできるセカンドライフだった。