自動運転・無人運転 なぜ日本で進まない?

 そんなロボット配達の技術は、車の自動運転・無人運転にも通じます。アメリカでは、無人運転タクシーが実用化されています。

 そもそも、工場の機械化は以前から進んでいたのに、なぜ配達ロボットや車の自動運転は最近になって進み始めたのか。工場などの機械と自動運転の決定的な違いは、“瞬時の判断が必要”という点で、それがAI(人工知能)の技術によって可能になってきたということです。

 例えば自動車の場合、右折時に「信号の右折矢印が出たら進む」や「前から対向車が来ていないときに進む」はプログラミングで可能です。ただ、実際の道路では「前から車が来ているが、あのスピードだったら進んでも問題ない」などの判断を人は瞬時に行います。こうした判断をAIができるようになることで、実用化が可能になります。

 自動運転の技術は、アメリカや中国では既に実用化レベルまで進んでいます。自動運転ラボの下山哲平代表によりますと、「AIのリスクを許容し、AI判断の学習機会を与えた」ことが、アメリカや中国で先行した理由だということです。日本は5~6年遅れているといい、その背景には事故を許容せず安全を重視する日本社会の文化があるのかもしれません。

 一方で、日本は最初のスタートが遅くても「便利だとわかったときの広がり方は世界最速」と下山代表はいいます。例えば、2008年にiPhoneが日本に上陸しましたが、2年後(2010年)の段階では“ガラケー”が9割以上でした。しかし2015年ごろに逆転し、今やスマホが90%以上になりました。