本は人と人とをつなげる
毎年、大久保図書館ではビブリオバトルを開催している。ビブリオバトルとは、参加者がおすすめ本を持ち寄って本を紹介しあい、いちばん読みたいと思った本に、皆で投票するという一種のコミュニケーションゲームだ。当館では、日本人と外国人が集って、おすすめ本を紹介しあうという形式で行っている。
「人を通して本を知る 本を通して人を知る」が、ビブリオバトルの趣旨だが、これに「本を通しての国際交流」という要素が加わる。こう申しあげると聞こえはいいが、ひとつ難点がある。話す言語を日本語にしているため、5分間で本を紹介することが、外国人の方にとっては、ハードルが高くなっている。
それでも、過去、果敢に門をたたいてきた外国人の方がいらっしゃった。いつだったか、日本に来てまだ2か月という方が、ジャック・ロンドンの短編集を片手に飛び込んできた。その彼は、本が好き、その思いひとつで、参加をしてきた。日本語のレベルは推して知るべしだが、それでも思いは十分に伝わってきた。会場の方々の心をつかんだことは言うまでもない。
ある時は、日本語に詰まってしまい、残り時間で、ポルトガル語で歌を歌い始めたブラジルの方もいた。会場は爆笑の渦だった。またある時は、ネパールの方がネパール語で書かれた小説で参加されたこともあった。アラブ首長国連邦の方が、日本の小説で参加されたこともある。逆に日本の方が、アラビア語で書かれた絵本で参加したこともある。
このイベントの醍醐味は、一言でいえば、「本で人と人とがつながりあうことができる」ということだ。本を介して、国境がない状態が生まれている。一冊の本には、人が「生きる力」になるとともに、「人と人とをつなげる力」もあることを強く感じる。
言葉はわからなくても「本が好き」というだけで、人は仲良くなれる。この大久保図書館のビブリオバトルは、今年で10回目を迎えた。いろいろな紆余曲折を経てきた。大変ではあるが、やめようと思ったことは一度もない。
