安楽死を中止したケースも 1人は日本人

プライシックさんとくらんけさん

苦しい立場に置かれながらも、助けを求める人に耳を傾け、「尊厳ある死」を手助けしてきたプライシックさん。これまで携わった約750件のうち、直前で中止したケースが2件ある。そのうちの1人が日本人女性のくらんけさん(仮名・当時30)だ。

難病患者のくらんけさんは、安楽死するために父親とともにスイスにきたが、致死薬入りの液体を口にしながらも、残された家族の身を案じて泣きじゃくってしまった。その様子を見たプライシックさんが、安楽死を中止したのである。

「私は患者に100%の意思がなければ安楽死を認めません。99%では足りないのです。彼女は残すことになる両親を思い、100%の心の準備ができていませんでした。『どうしても死なせてほしい』と泣きすがりましたが、私はプロとして認めるわけにはいきませんでした。彼女にもう1度、日本に帰って考えてもらいたかったのです」