「死神」と批判され 心折れかかった過去

フランス人男性の安楽死を手助けするプライシックさん

プライシックさんは、安楽死に反対する団体から「死神」と批判されることも少なくない。また、外国人の安楽死希望者を受け入れているため、スイスが「自殺ツーリズム」を助長しているとの指摘もある。死のビジネスが横行する懸念をもたれているのだ。

スイスの安楽死団体はいずれも非営利団体が実施していて、財源は会費と寄付で賄われている。ライフサークルでは1回の安楽死にあたり、患者が支払う費用のうち団体に残るのは1000スイスフラン(日本円約17万円)ほど。残った資金は老人ホームへの寄付金に充てているという。財団法人であるため、年に2回、政府による帳簿のチェックも受けている。

「お金のために安楽死を手助けしていると、私たちは何度も批判されてきました。しかし、お金を儲けたいのであれば、こんな辛い仕事は割に合わないでしょう」

2016年には精神疾患がある患者の安楽死を手助けしたとして殺人などの罪で起訴されている。1審では執行猶予付きの有罪判決を受けたが、2審で死の直前のやりとりを撮影した映像で患者に判断能力があったと認定され、無罪が確定した。

「法廷の証言台に立ったとき、『なんでこんな目に遭わなければならないのか』と心が折れました。この仕事を辞めてしまおうかとまで思いました」