「ダイエットした・したい」という女性は9割。ほとんどの女性が、自分の体形を “細くしたい“ と願っている。その一方で、ストレスなどから摂食障がいとなり、過度に痩せたり太ったりして 社会の中で「生きづらさ」を感じてしまう人も多い。
社会や他人が決めた「理想的な体型・外見」に左右されず、”ありのままの体型を愛する” = “ボディポジィティブ” について、プラスサイズモデルとして活動している野口詠子さんの生き方を通して考える。
取材:文 長崎放送 報道制作部 久富美海

■ 激務からうつ病に…体重が1年で35キロ増加
カメラ取材に行く前、私は休日に野口詠子さん(30)と長崎市内のカフェで打ち合わせを行った。これが初対面だった。身長152センチの私に対し、詠子さんは175センチ。見上げた。そしてふくよかな体に “迫力” を感じた。この迫力は『魅力』に近いものだった。圧迫や圧倒とは違う。詠子さんの内から放たれている ”自信のようなもの” が見えた。


詠子さんは主にLサイズ以上の服を着る「プラスサイズモデル」
いまは大手ファッションブランドGAPのモデルにも抜擢され、インスタグラムを中心にファッションやメイクを発信している。
そんな詠子さんは、かつて看護師だったとき、うつ病を発症。体重が1年で35キロ増加するなど摂食障がいに苦しんだ過去を持つ。
『初対面で体型の話をするのは失礼かも…』 私はドキドキしていた。
しかし、心配とは裏腹に、詠子さんが私にかけてくれた言葉は「やっと思いを世間に伝えてくれる人が現れた!」だった。
■ 才色兼備の同級生がまさかの“過食症”に
私が、詠子さんを知ったきっかけは、大学院で「ルッキズム(外見至上主義)」を研究していた友人Kからの紹介だった。Kは、中学・高校の同級生で、細身で頭脳明晰、吹奏楽などもこなす、まさに才色兼備な女性で、私の憧れの存在だった。
しかし、完璧とも思えたKが、大学時代、周りからの一言で “過食症”の摂食障がいになったことをSNSで知った。投稿した当時、既に病気は克服し、「自分を大切にするということを考えてほしい」という思いで発信したという。
憧れていたKが摂食障がいになったことに衝撃をうけると同時に、彼女までをも悩ませる「ルッキズム」ってなんなんだろうと思った。
■ 細い=美しい の呪縛
取材したいと思ったのは入社2年目・記者1年生の夏だった。夏になると毎年のように「脱毛」「痩身」「ダイエット」の文字が雑誌にもSNSにも並ぶ。
私自身も毎日、体重計に乗り、『数字』の呪縛から逃れられないでいる。
「超わかる!今の体型じゃ夏のファッション楽しめないよね!」なんて思って眺めつつ、「いや好きな格好して良いじゃん!細くないと腕出しちゃいけないって誰が決めたんだ!」とも思う。
価値観の多様化が進んでいるのに、多くの人が ”細い=美しい” の呪いにかかっている。
一方で、コロナ禍で人と会わない生活の変容で“摂食障がいの低年齢化”が進んでいるという。
せっかく多くの人に発信できる職に就いたのだから、今こそ『ボディポジィティブ』について発信したい、と考えていた。
■ 過食の後の拒食 体型の変化で鏡を封印

詠子さんは現在30歳。大学卒業後、看護師になった。しかし2年ほどで退職。激務の中で、うつ病を発症したのだ。1年目の最後あたりに急にめまいがし始めたという。
ずっと世界がぐるぐると回っている状態で、ギリギリの状態で仕事をしていた。耳鼻科にもかかったが、耳にも脳にも異常は無し。ストレスでは?と診断された。