医療関係者に見てほしい「Shrink」

影山 「Shrink-精神科医ヨワイ-」は、中村倫也さんが好演でした。心の琴線の細やかなところを演じるのがうまいですね。

田幸 「Shrink」を見ていると、単に医者にかかるだけでは解決しない問題があることが分かります。私は医療ライターもやっていて、医療現場の取材をすることもあるのですが、このドラマで描かれたように、患者の顔もろくにも見ず、ルーティンで投薬するだけという例もあると思います。自殺大国といわれる日本では、精神医療につながるまでのハードルがすごく高いという問題もあります。

影山 その話もドラマの中に出ていました。このドラマには受診のハードルを下げるという意味もあるわけですね。

田幸 精神医療にかかるハードルを下げたいということと、医師の患者との向き合い方を考えるために、医療関係の方にも「Shrink」を見てほしいと思いました。

土屋太鳳さんと中村さんのコンビネーションが意外とよかったです。土屋さんは体も心も丈夫なので、あまり奥行きのあるイメージがなかったのですが、このコンビネーションで言うと、繊細な繊細な先生に、素直で優しくて健全な人がついている感じがすごくいいと思いました。

影山 「団地のふたり」(NHK BS)について短く。小泉今日子さんと小林聡美さんが、団地住まいの親友で、幼なじみもいいものだというのを改めて感じました。

それから、これはエンターテインメントあるあるですけれど、教え子が「団地に住みたくなりました」なんて言うんです。それがまた現実をつくる。「北の国から」に触発された北海道移住のように、団地が見直されたりしているんですね。

<この座談会は2024年10月7日に行われたものです>

<座談会参加者>
影山 貴彦(かげやま・たかひこ)

同志社女子大学メディア創造学科教授 コラムニスト
毎日放送(MBS)プロデューサーを経て現職
朝日放送ラジオ番組審議会委員長
日本笑い学会理事、ギャラクシー賞テレビ部門委員
著書に「テレビドラマでわかる平成社会風俗史」、「テレビのゆくえ」など

田幸 和歌子(たこう・わかこ)

1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経て、フリーランスのライターに。役者など著名人インタビューを雑誌、web媒体で行うほか、『日経XWoman ARIA』での連載ほか、テレビ関連のコラムを執筆。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『脚本家・野木亜紀子の時代』(共著/blueprint)など。

倉田 陶子(くらた・とうこ)

2005年、毎日新聞入社。千葉支局、成田支局、東京本社政治部、生活報道部を経て、大阪本社学芸部で放送・映画・音楽を担当。2023年5月から東京本社デジタル編集本部デジタル編成グループ副部長。2024年4月から学芸部芸能担当デスクを務める。

【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版(TBSメディア総研が発行)で、テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。2024年6月、原則土曜日公開・配信のウィークリーマガジンにリニューアル。