その街で暮らしている気になる「錦糸町パラダイス」
影山 歌舞伎町と並んでディープなまちということで「錦糸町パラダイス」(テレビ東京)が好きでした。柄本時生さんがプロデューサーも兼ねています。
三人の男が錦糸町でお掃除屋をやる。お掃除というのは、実際の店舗や家屋だけでなく、その人のメンタルな部分も踏まえてお掃除するんです。テンポ感、余韻感がとても好きで、しゃれたドラマでした。
田幸 一つの特徴として「引き」の絵が多いんです。わかりやすくズームしないので、自分自身が錦糸町の住人になって、彼らと同じ空気を吸い、同じ風景を見ている感じになる。この作り方もおもしろかったです。
倉田 登場人物が非常に多く、人間関係が次々に連なっていくので、全体を見ないとわからないドラマというか、全体を見るからこそ楽しめるドラマでした。
それぞれにいろいろな人間関係があって、一つのまちの中で生きる人たちは、こうやってつながり合っているんだ、現実でも人は一人では生きられないという当たり前のことだけれど、そういったメッセージ性も感じました。
勉強にもなった「しょせん他人事ですから」
影山 「しょせん他人事ですから」(テレビ東京)。中島健人さんがぶっ飛んだ弁護士役で、ネット問題に特化して解決していく。「他人事ですから」とか言いながら冷たいわけではなく、ちゃんと思いがあり、それを口癖のようにして解決に進んでいく。タイムリーというか、テレビ的でよかったです。
田幸 私も勉強になるなと思いながら見ました。
倉田 ネット上で様々な問題が起きている今、自分が加害者にならないためにとか、被害者になったときにどうすべきかなど、すごく学べるドラマでした。
中島さん演じる主人公がちょっとエキセントリックだけれど、何となくチャーミングで、嫌いになれない、その辺のさじかげんがすごくよかったです。
河合優実の抜群な表現力
田幸 「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」(NHK)、これはすばらしかった。障がいのある当事者をドラマに起用する流れが出てきたのは、この作品がきっかけぐらいの感じですね。
そして一見悲惨な話を、そう見せないユーモアたっぷりの河合優実さんはやはり上手です。どこか遠くから見るような俯瞰した感情表現がすばらしく、河合さんじゃなかったら、こんな明るく楽しいドラマになるのは、難しかったんじゃないかという気がします。当事者俳優で出ている吉田葵さんもチャーミングで、作品の中の大きな光になっていると思いました。
倉田 吉田さんですが、当事者が演じるのがどんどん当たり前になればいいと思いつつ、演技力も当然求められるわけで、吉田さんにはその演技力がしっかりあります。別の作品でも見てみたいと思いました。