「ここは商業施設が集まっているところで、仮設住宅の目の前に大きな充実したスーパーなどが並び、広い駐車場に社会福祉協議会の災害ボランティアセンターの拠点があったりした。生活上必要な機関が集まっている」

「生活機能が集積していて、山がちで土地が少ない能登半島としては、仮設住宅の土地を広く取れたほうだなと思っていました。ただ、川の近くでした。洪水の心配は “なくはない” ところだった。そこが、50年に1回の大雨(での洪水)を想定した洪水浸水想定区域だった、ということです」

仮設住宅の設置にはスピードが求められる一方、下水道施設などインフラがなかったり、従来の生活圏と離れすぎた地域には建設しにくい。

地震が被災した阪神淡路大震災や東日本大震災などで、仮設住宅を拠点に生活を再建していく人々と関わってきた稲垣さんは、浸水リスクが多少あっても利便性が高い地域に仮設住宅が建設された状況をおもんぱかった。

実際、能登の被災地はそれ以前の災害の被災地に比べ、既存建物を借り上げた“みなし仮設”の住宅が少ないという。

「東日本大震災では仮設住宅の建設が5万3000戸ありましたが、より多い6万8000戸が、借り上げられた“みなし仮設”でした」「能登は建設の半分以下、2800戸あまりが“みなし仮設”。それだけ(居住に適した)土地がない、賃貸物件自体が少ない」

沿岸部の低地に建つ仮設住宅(輪島市・24年5月撮影)

被災後も困難を抱える能登と被災地と「似ている」沖縄。

稲垣さんは、沖縄でも、大規模災害に襲われた場合の「その後」を想定しておくことが大切だと指摘する。(この記事の後編を読む