「死期を早めるなんてできない」夫の思い

カロリーナさんの家族は「生きることができるのであれば、安楽死を選択すべきではない」という立場だ。
ドミンゴさんは、余命が宣告されたからこそ、残された時間を大切にできると話す。
「ホスピスではあらゆる痛みと不快な症状を和らげてくれ、妻は一日中、家族の愛情に包まれて穏やかに過ごしています。私も妻も安楽死を考えたことは一度もありません。妻、そして子どもたちの母親の死期を早めるなんてできるわけがありません」

ドミンゴさんは、末っ子のアナさん(9)とパルマさん(12)にも、カロリーナさんの病状を包み隠さずに話した。
「ママは具合が悪くて、もうすぐ天国に行くかもしれないと伝えました。娘たちは『どうしてこんなに辛いことが起きるの』と泣くこともありました」
2人は幼いなりに母親が旅立つ現実を受け止め、最後の日々を過ごしている。
パルマさんは「ママはすごくクリエイティブな人なの。手を握ると強く握って笑ってくれるの」と母親の自慢をし、アナさんも「そう、手をぎゅうって。それでニッコリして。とっても良い人なの」と続けた。

それから3か月後の2021年10月、カロリーナさんは家族に見守られるなか、安らかに息を引き取った。亡くなる直前まで、ほとんど痛みを感じることなく、家族が手を取ると、握り返して応えてくれたという。